アメリカでのリサーチ計画時に気をつけること:婚姻状況と家族のかたち

アメリカでのリサーチプロジェクトを実施する際に日本人リサーチャーが無意識に陥りやすいデモグラフィック事項の落とし穴の一つ、婚姻状況と家族のかたちについて、今回は考えたいと思います。

NY・セントラルパークでの昼下がり遠景。たくさんの家族が、思い思いの時間を過ごしている。
NY・セントラルパークでの昼下がり遠景。たくさんの家族が、思い思いの時間を過ごしている。

アメリカでリサーチプロジェクトを計画する時に気をつけたいことについて、今後数回に分けて紹介したいと思います。

日本と違うらしいというのは知っているけど…

通常、リサーチャーがプロジェクトを計画する際、「こんな人に話を聞いてみたい!」というある程度の調査対象者像や最低条件があると思います。そして、希望に近くてなるべく良い対象者が探せるように、様々な可能性を考えながら、スクリーナーを作って候補者をふるい分けていると思います。

もちろん、国が違う人に聞くのですから、経験のあるリサーチャーは日本の常識と違うことを念頭に注意しながら作っていると思います。

特に「価値観に対する質問」や「ライフスタイルに関する質問」などで、違いを意識しながら作るのは基本だと思いますが、ついうっかり気にするのを忘れがちなのが、デモグラフィック(人口統計学的属性)関連かもしれません。

世界は家族のかたちも様々

平成25年版 厚生労働白書」によると、日本と世界各国の婚外子の比較が見て取れます。日本は婚外子の割合が非常に低いのに対して、アメリカは40.6%と高いことがわかります。ヨーロッパの国々も高いところが多いようです。

少し前の調査になりますが(2011年)、アメリカの調査会社Pew Research Center調べ「A Portrait of Stepfamilies」によると、18歳から29歳までの半数以上(52%)の人は義理の兄弟または家族がいるということでした。今から5年前の調査ですから、これよりも現在の状況はさらに進んでいることと想像できます。

また、このコラムの最初の回にも取り上げましたが、前出のPew Research Centerのレポート「5 facts about the modern American family」によると、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の大人のうち、300万人(LGBTの37%)が人生の中で子供を持つと言われています。

ここから言えることは、少なくとも同性のカップルの子供の場合は生物学上、養子をとることになるはずですが、こういった養子縁組は決して珍しいものではないということではないでしょうか。

アメリカで暮らしていると、LGBTに限らず養子縁組のケースも日本にくらべて遥かに多いことが実感できます。またアメリカ国内の子供の養子だけにとどまらず、アメリカ国外の子供を養子に取るケースも非常に多いのではないでしょうか。アメリカのセレブの多くが海外の子供を養子に取ったというニュースも過去に何度もあったと思います。セレブに限らずアメリカ社会において、養子縁組も普通の家族のかたちであると理解するのが自然でしょう。

婚姻状況、家族状況に関する質問は要注意!

しかしながら、日本では一つ屋根の下に住むことについて、男女のカップルを中心につい考えがち、また子供と言ったら血のつながりのある関係を前提に無意識に考えがちだと思います。日ごろ暮らしている社会のかたちとは違う環境について考えをめぐらせる作業は、基礎知識の慎重な収集が一つのポイントであり、また柔軟に発想を膨らませて行う必要があることを忘れないようにしなくてはいけないと思います。こういったデモグラフィック事項についての落とし穴は、日本人リサーチャーが無意識に陥り易いものなのかもしれません。

じゃあ、例えばどのように聞いたらいいの?

例えば、リサーチャーがあるプロジェクトのスクリーナーを考えるとします。そのターゲットにしたい人が誰かと一緒に住んでいるか、婚姻状況はどうなのか、をチェックするためにこのような質問を作るかもしれません。

Q. あなたにあてはまるものはどれですか?

  1. 独身
  2. 結婚していて、子どもはいない
  3. 結婚していて、同居している子どもがいる
  4. 結婚していて、子どもがいるが同居はしていない
  5. その他

この選択肢だと、婚姻状況と同居状況をまとめて聞けますし、日本で聞くなら大きな問題なさそうです。でも先に述べたようにアメリカでは、これを英訳してスクリーニングすると、少し偏りが出るかもしれません。

その際例えば、婚姻状況と子供について切り離して考え、結婚や事実婚の相手の性別が必ずしも異性とは限らないように気をつけ、子供との血縁状況や親権に関係なく回答できるようにするのも一つの解かもしれません。

Q. What is your marital status? (あなたの婚姻状況は?)

  1. Divorced (離婚)
  2. Live with a partner (パートナーと一緒に住む)
  3. Married (結婚)
  4. Separated (別居)
  5. Single (独身)
  6. Widowed (死別)
  7. Would rather not say (言いたくない)

Q. How many children are in your household? (同居の家族に何人子供が居ますか?)

  1. None (いない)
  2. 1 (1人)
  3. 2 (2人)
  4. 3 (3人)
  5. 4 or more (4人以上)

シリーズ「アメリカでのリサーチ計画時に気をつけること」

次回は、「学びについて」日本の常識と比較したいと思います。

商品開発のための現地実態調査

イードの米国子会社・Interface in Design, Inc.は、どのような製品に関してもフレキシブルなスタイルで、アメリカをはじめとした世界各国で調査を実施することが可能です。

例えば、現地情報を出張せずに現地の状況を把握することも出来ます。

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森原悦子
著者(森原悦子)について
Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。
書籍のお知らせ:京都女子大学家政学部生活造形学科の教授である山岡俊樹先生が、2016年6月に『サービスデザイン: フレームワークと事例で学ぶサービス構築』という本を出版されました。この本では、サービスデザインの考え方やデザイン手法について解説してあります。出版にあたり、アメリカの実例をコラム形式で紹介してほしいという依頼を受け、U-Siteでのコラムのうち、本の内容に合うコラムを2本選び、それを一部変更したものが掲載されています。

公開:2016年9月13日
著者:森原悦子

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