生活を楽しくする、サブスクリプションボックスの世界

AmazonプライムやSpotifyのように、年額/月額料金を払ってサービスを提供するビジネスがここ数年増えてきています。サブスクリプションサービスにもさまざまなものがありますが、その中でもアメリカで人気のサブスクリプション“ボックス”の世界をご紹介します。

  • 森原悦子
  • 2017年10月10日

サブスクリプションボックスとは、毎年/毎月定額料金を払うと箱が届くサービスです。「その箱の中身がどんなものか」というところがポイントで、近年のサブスクリプションボックスの中で有名なものの一つはSTITCH FIXではないかと思います。

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STITCH FIX

実際のバリューは箱の中の商品ではない

一見すると、「毎月洋服が箱に入って送ってくれるサービスでしょ? それのどこがそんなにウケるの?」「アメリカでは買い物が簡単に行けないから流行るのでは?」と思ってしまいますが、このサービスがウケた理由は、「自分のスタイリストが月々20ドルで付く」というところです。

サブスクリプション=購入申し込みをする際に、自分のサイズはもちろんのこと、「何が欲しいか?」「何は要らないか?」「どんなデザインが好きか?」など、様々な質問に答えていきます。その情報を基にスタイリストが自ら選んだ商品が数点毎月送られてきます。洋服が気に入れば購入、気に入らなければ返品。送料は無料。購読者はスタイリストの代金20ドル+買取洋服代金を支払う。というサービスです。つまり、ビジネスバリューとしては、洋服ではなくスタイリストの選択眼という形のないもの、というわけです。

実際に購読している友人に聞いたところ、「サイズはぴったりだし、買い物に行く時間がないので、正直助かっている。でも、何回か購読リピートしないと自分の趣味をスタイリストにわかってもらえないので、最近自分の好みのファッションをPinしたPinterestのリンクを送ったの。だから次回が楽しみ」と言っていました。

キュレーション力(プロデュース力)がサブスクリプションボックスの決め手

STITCH FIXの成功と同時にたくさんのサブスクリプションボックスが世の中に出てきています。ファッションや下着、生活用品のサブスクリプションボックスをよく目にしますし、日本に紹介されるのもそういったメジャーなものが多いのではないでしょうか。ここではそのような王道からはちょっと外れて、私が個人的に面白いなと思った変わり種サブスクリプションボックスをご紹介したいと思います。

Art in a box

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Art in a box

Art in a boxは、カリフォルニア州にあるアートギャラリーが販売しているボックス。購読購入をすると、アンケートリンクが送られてきて、購入者の好みのアートの3つの形容詞を選んで、どんな形式の作品(油絵・コラージュ・陶器・デジタルプリントなど)が好きかを選ぶと、そのデータに基づいて送られてくるので、その中から好きなものを選んで購入するサービス。STITCH FIXのアート版という感じですね。

現代版の「科学と学習」の付録? 子供向けサブスクリプションボックス

Bitsbox

Bitsboxは、子どもが遊びを通してコーディングを学習できるサブスクリプションボックス。2015年にKICKSTARTERでクラウドファンディングされたサービス。

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Bitsbox

毎月いろいろなコーディングのプロジェクトが箱に入っていて子どもがそれを組み立てる(コーディングする)と、自然とコーディングの学習もできるというもの。こんなボックスで毎月遊んだら、スーパーキッズがたくさん生まれそうですね。

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Bitsboxの中身

New Hobby Box

子どもが遊びながら学ぶなら、大人も学んでみようということで、こちら、New Hobby Boxは、毎月いろいろなジャンルの趣味が箱に入っていて、挑戦できるボックス。2017年の11月の趣味は織物のようです。このサービスは、「あなたの新しい趣味をキュレートします」というもの。

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New Hobby Box

しかしまったく興味のない趣味のボックスが送られてきたらどうするんだろう…と思いつつ過去のボックスを見ていると…

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New Hobby Boxの過去のボックス

Lock Picking (錠前破り)、養蜂、象牙細工などという趣味ボックスもあったようです。過去のボックスは単体でも買えるようなので、もしかしたら、そのバリエーションの中から自分に合ったものを選んだほうがよさそうな気もしますが、自分の興味のないものにトライすることで新しい発見もあるかもしれませんね。錠前破りはちょっとびっくりしましたが…。

老若男女、古き良きものをサブスクリプションボックスで楽しむ

Vinyl Me, Please

Vinyl Me, Pleaseは、Vinyl=レコード盤をボックス購読で買うサービス。もちろんサイトでは自分で選んで、レコード単体でも買えるけれども、このサービスでは毎月サービス側が選んだLPレコードとそのレコードに合わせたアートプリント、レコードに合わせたカクテルのレシピがボックスの中身。

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Vinyl Me, Please
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Vinyl Me, Pleaseのメニュー

Grand Box

Grand Boxは、「65歳以上のシニアにプレゼントする」というコンセプトの下に作られているボックス。このビジネスのオーナーが元々自分の州外に住む祖父母に毎月ボックスを送っていたのがきっかけで作られたそう。箱の中にはシニア向けに選ばれたギフトが入っているけれども、一番のギフトは5枚の写真とメッセージを同封できることかもしれません。

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Grand Box

いっそのこと、自分でサブスクリプションボックスを作ってみるのも可能

ありとあらゆるジャンルのサブスクリプションボックス。ここで紹介した以外にもたくさん面白いものがありました。

日本の駄菓子のサブスクリプションボックス

調べたところ、日本の駄菓子のサブスクリプションボックスもいくつかあります(たとえば、Freedom Japanese Market)。いろいろなアイデアで、ボックスを販売する側も楽しんでいると感じました。

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Freedom Japanese Market

サブスクリプションボックスのビジネスを始めるツールサイト

Createjoyは、自分でサブスクリプションボックスのビジネスを始めるツールサイト。メインの仕事以外に、副業をもつケースが多いアメリカでは特に自分のアイデアでこのようにビジネスを始められるツールが多くあります。アイデア次第、キュレーション力、プロデュース力が勝負のサブスクリプションボックスはアメリカ人の気風とビジネス環境にぴったりはまっているので、こんなに拡散・拡大しているのだと感じました。

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Createjoy

商品開発のための現地実態調査

イードの米国子会社・Interface in Design, Inc.は、どのような製品に関してもフレキシブルなスタイルで、アメリカをはじめとした世界各国で調査を実施することが可能です。例えば、出張せずに現地の状況を把握することも出来ます。

皆様の会社の商品企画や開発、デザイン部の方々が、現地向けの商品を開発する際の一助(マーケットの状況や、製品の使用状況などを通した仮説の抽出など)としていただけるはずです。

ご希望に応じてプレインタビューを加えたり、観察調査を加えるなどのオプショナルサービスも提供可能ですので、下記よりお問合せ下さい。

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森原悦子
著者(森原悦子)について
Interface in Design, Inc. COO/President。
武蔵野美術大学卒。インダストリアルデザイナーなどとして活躍後、旧イードに入社。定性調査やエスノグラフィーといった手法を得意とし、クライアントのグローバルな商品開発のコンサルティングリサーチを多く手がける。2011年8月より現職。

編集部注

なお、弊社のグループ会社である株式会社絵本ナビでは、年齢別に厳選した良書絵本をご家庭やオフィスに毎月お届けする「絵本クラブ」という定期配本サービスをやっております。