政府広報ポータルサイトのユーザビリティ

日本の政府が公式にどのような態度をとり、対応をとろうとしているかを知るためには、「政府広報オンライン」のようなポータルの存在意義は大きい。これがワンストップサービスとして十分に機能していればいいのだが、どうもそうはなっていない。

  • 黒須教授
  • 2021年6月1日

内閣府という部局について

内閣という名のつく府省に内閣官房と内閣府がある。内閣官房は内閣総理大臣のスタッフ機関であり総合戦略機能をもっている。内閣府は内閣官房を助けながら、行政各部の総合調整を行う。したがって各府省の取りまとめは内閣府の仕事となる。

内閣府は、各府省や部局に関係しているという位置づけから、それらの組織の総合窓口のような役割も担っている。これがワンストップサービスとして十分に機能していればいいのだが、どうもそうはなっていない。

政府広報オンラインというポータルサイト

内閣府大臣官房政府広報室が運営する「政府広報オンライン」というポータルがある。そこには、「暮らしに役立つ情報『特殊詐欺』」「宇賀なつみのそこ教えて」「柴田阿弥とオテンキのりのジャパン5.0」というトップ記事があり、その下に「新型コロナウィルス対策」「DV・児童虐待対策」「定期購入のトラブル」「新型コロナウィルスワクチンについて」「防災・減災」「Highlighting JAPAN February 2021」といった記事が並び、さらにいろいろな記事が配置されている(2021.03.09時点)。これを見ていると、どうもサイト作成者が一般の報道メディアのサイトと勘違いして作成したような印象を受ける。

政府広報オンライン(2021年3月9日時点のInternet Archive)

またトップバーには、「全メニュー」「コンテンツで探す」「カテゴリで探す」「このような方におすすめ」というマウスオーバーメニューがあり、各々にマウスを乗せると膨大なメニューが表示される。さらに文字の大小や英語版への入り口があり、一番右側に控えめに検索のための虫眼鏡アイコンが配置されている。

さて、このサイトは、どういう人々を対象にしているのだろう。このサイトが大好きで、毎日あるいは毎週のように訪問している人が、もしかしたらいるのかもしれない。しかし、新聞を読むようにこのサイトをじっくりと読む人がどれくらいいるのか、疑問に思わないだろうか。そして、もし読む人が少ないのであれば、これは税金の無駄遣いということになってしまう。

このサイトの検索機能

むしろ、大抵の人は、何かを調べたくてこのサイトにたどり着いたのではないかと思われる。その場合、虫眼鏡アイコンをクリックして、緊急事態宣言の延長とか、ワクチン接種の日程の最新情報とか、オリンピックやパラリンピックについての最近の審議内容とか、ミャンマー情勢への日本政府の対応とかを知りたくて来るのではないだろうか。いや、ここに例えで出したものより、もっともっと多様な疑問があると思われる。そうした多様な疑問に対して一般的なメニュー展開で対応しようとするのは手間がかかりすぎるから無理があるといえる。

むしろ虫眼鏡アイコンによる検索機能を能力の高いものにして、しかもアイコンをクリックしてから検索文字列を入れるバーを表示する(1クリック分余計な手間が増える)のではなく、一般の検索エンジンのように検索文字列の入力バーを最初から表示しておいたほうが良いのではないかと思えるが、そもそも虫眼鏡アイコンが右端にあって見つけづらい。余計な記事を表示したり、プルダウンメニューから検索させたりするのは意味がないとすら言える。

ちなみに、虫眼鏡アイコンから検索できるのは、サイト内検索だけであり、内閣府が担当している全府省のサイトは含まれていない。各府省を取りまとめている内閣府であるなら、各府省のサイトをもキチンと調べ、そこからの情報も表示すべきではないのか。問題ごとにおおよそ担当府省はわかるから、当該府省のサイトを調べるという手もあるが、「オリンピック・パラリンピック」のように複数の府省に関係する問題もある。その意味では、せっかくの内閣府という立ち位置を利用して、全府省に関するワンストップサービスを行うようにするのがベストな方針設定というべきである。

たしかに、一般のネット検索のほうが容易にいろいろな情報を調べることはできるが、日本の政府が公式にどのような態度をとり、対応をとろうとしているかを知るためには、このようなポータルの存在意義というのは大きい。ぜひとも、大改修をしてユーザブルなポータルに衣替えをしてほしいものだ。