UCDやHCDに関する製品・活動認定制度のあり方

「HCDベストプラクティスアウォード2016」の最終審査会と表彰式が行われた。その時に疑問に思ったのは、そもそもUCDやHCDについて、最優秀賞とか優秀賞とか、順位づけをすることに意味があるのだろうか、という点である。

  • 黒須教授
  • 2016年7月14日

HCDベストプラクティスアウォード

先日、HCD-Netのフォーラムがあり、そこで「HCDベストプラクティスアウォード2016」の表彰式が行われた。

多様な事例に順位はつけられるのか

疑問に思ったのは、最終審査会の時にも、そして表彰式の時にも感じたことだったのだが、そもそもUCDやHCDについて、最優秀賞とか優秀賞とか、順位づけをすることに意味があるのだろうか、という点である。

HCD-Netでは、この仕組みをHCDの普及と活性化のためにやっているという位置づけのようだが、そもそも応募が20件にも満たない状況で普及や活性化につながるものなのだろうか。しかも、その少数の応募のなかに、今回は、情報システムがあり、フライパンがあり、医療機器があり、という具合で、実に多様な内容が含まれていた。これらに対して同一の基準で評価することが、そもそも可能なのだろうか。

最終審査会では、僕はユーザにどの程度接近し、そこから得た情報を製品やシステムに反映しているか、という基準で判断をしたけれど、主催者からは判定基準についてのガイドラインは示されなかった。数人の審査委員は、それぞれの基準で評価したようだが、まあまあという感じで意見集約ができたことは、幸いにもそれなりに皆、似たような考え方でいたのかもしれない、と考えられる。

しかし、順位付けをするという点については、僕はいまだに納得できていない。「良くやってますね」と「今一歩ですね+まだまだですね」という二つに区別して、前者に認定を与えるという認定制度でいいんじゃなかろうか。多業種が含まれている現状では、順位をつけて表彰という仕掛けはどうしても馴染まないような気がしてならない。

積極的に応募を促す努力が必要

それと応募数が少ないことについては、もっと積極的に呼びかけをすべきではないかと考えている。UCDA(ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会)は保険業界について、そのパンフレットなどの評価を実施しており、その審査会にも参加したことがある。そこでの経験から考えられるのは、ある程度ドメイン(業界)を限って対象を明確にして比較するなら、同一の評価基準を適用できるし、順位付けも可能だし、さらにはその業界に対してUCDやHCDを普及させたり活性化させたりすることに役立つだろう、ということだ。

そもそもUCDやHCDの適用対象は実に多様で、製品やサービスのすべてを含んでいる。サービスについては、現状、製品に関連したサービスしか焦点とされていないようだが、純粋なサービス、つまり、医療や介護、警備、教育など、特定の製品に関連しないサービスも沢山ある。そして、そこにもUCDやHCDの考え方は必要とされるのだ。それを放置しておいて、待ちの姿勢で応募をまっていていいものだろうか。

医療サービスを認定する場合

たとえば医療に関して考えるなら、外来の新規患者が来院し、診察申込みをし、待ち、診察を受け、会計処理をし、薬局に行き、申込みをし、待ち、薬を受け取って帰宅する、という一連の流れにおけるユーザ中心性を取り上げることができる。

医薬分業で病院と薬局が分かれている現在ではあるが、その仕組みはユーザたる患者が望んだことではない。だから一緒に扱う必要がある。そして、たとえば都内の大病院や中規模の病院、個人病院などに声がけをする。いやシステムが違ってくるから、大病院なら大病院だけでやった方がいいかもしれない。

同業者の間の情報はすぐに横に伝わるだろうから、こうした認定制度ないし表彰制度があり、どこそこは受賞したらしい、となると「なんでうちは駄目だったんだ」となるだろう。いや、そうなることを期待したい。そんな形でUCDやHCDへの認識度が高まればいいのに、と考える。

折角の機会をもっと活用するように関係者にお願いしたい。