YouTube、始めました
2024年5月にYouTubeチャンネルを開設し、そこで「黒須のユーザ工学入門」を連載することにした。講演や講義とは違ってもっとオープンにして、広い範囲の人たちに話を届けたいという気持ちがあったのだ。
YouTube開設へ
今年、2024年5月にYouTubeチャンネルを開設した。そのチャンネルで「黒須のユーザ工学入門」というシリーズを連載することにした。ご参考までに、 https://www.youtube.com/@MasaakiKurosu/videos に一覧が表示される。現時点でアップしているのは以下のとおりである。
No. | タイトル | 公開日 | 視聴回数 |
---|---|---|---|
No. 1 | ユーザ工学とはそもそも何か | May 5, 2024 | 92 |
No. 2 | ユーザビリティとはどういうことか | May 10, 2024 | 45 |
No. 3 | ISO規格におけるユーザビリティ | May 30, 2024 | 27 |
No. 4 | 人間中心設計という考え方 | Jun 4, 2024 | 25 |
No. 5 | ISO規格における人間中心設計(1/2) | Jun 20, 2024 | 21 |
No. 6 | ISO規格における人間中心設計(2/2) | Jun 26, 2024 | 26 |
No. 7 | ウォーターフォールと反復型 | Jul 12, 2024 | 17 |
No. 8 | デザイン思考 1/2 その考え方 | Jul 19, 2024 | 2 |
No. 9 | デザイン思考 2/2 プロセスと事例 | Jul 22, 2024 | 16 |
こんな具合に、まあまあ順調に回を重ねてきてはいる。ただし、視聴回数はまだ右端のような状況で、まだまだである。No.9はデザイン思考を扱っている点と事例というキーワードが効いたのか、わずかながら跳ね上がってはいる。いつの日か、これが200になり、500になり、1000を超すようになるやも、と思いながら制作を続けている。
そもそもの動機
UXやHCDなどについては、すでにこのU-Siteへの連載があるのだが、YouTubeについてはそれと共存する形で発展させていきたいと思っている。YouTubeを始めたそもそもの動機は、これまで何十回と講演や講義をしてきたが、受講してくれる人たちは限定されたものであり、ある意味でクローズされた世界でしかなかったという反省にある。もっとオープンにして、広い範囲の人たちに話を届けたいという気持ちがあったのだ。
それと、そこで行っている話は、そろそろ内容が固まってきており、また自分の考え方も輪郭がはっきりしてきたので、それを公開してもいいかな、と思ったのである。もちろん、ある意味ではその内容は自分のノウハウの塊でもあるので、それを公開してしまうと講演や講義のネタバレになってしまうという心配がなかったわけではないが、逆にYouTubeがPRとなって、新しい講演や講義のチャンスにつながるかもしれないと前向きに考えることにした。もちろん講演や講義の時には、折々の話題を突っ込むことにしているので、YouTubeで公開してしまったからといって、中身が空になるわけでもない。これが一番の動機である。
また、千葉工業大学の安藤さんがYouTubeをやっていることも刺激になった。彼の場合はライブ録画を公開するやり方をとっているので、それなら僕は講義形式で行こうと考えた。いろいろとチャンネルが増えることは、この領域の話題に期待をもっている人たちに良い材料提供になると考えたのだ。
YouTuberとしての収入については、あまり期待できないだろうと思っている。世のYouTuberと言われる人たちのチャンネルも数多くみてきたが、若い彼らの熱量が自分にあるかというと、そこまでは頑張れまい、と思うからだ。まあ、年金生活の自分にとって、YouTubeで収入があれば、多少、生活に余裕ができるとは思うけど、年とったせいか、そもそも金を使う目的というものが希薄になっている。いまの生活はまあカツカツというところだけど、住む家はあるし、食べたいものを食べ、1-2か月に一度くらいは旅行にも行けている。健康にはあまり自信はない状態だけど、医療費が足りなくて困るというわけでもない。遮二無二働いて収入を増やさないと生きてゆけない、欲望が充足できない、というわけではない状態である。
以前、『UX原論』を上梓し、その後も共著で二冊ほど出版してきたが、書籍の形で世に問いたい内容としては、後は「人工物進化学」くらいのものだ。出版不況と言われるなか、自分としての成果、つまり生きた証というものは、新しいメディアに残しておくようにしたい、と考えたこともYouTube開設のモチベーションになっている。
U-Siteとの共存
このU-Siteの原稿とYouTubeとでは基本的な立ち位置が異なっている。U-Siteでは、世の中のいろいろな出来事について、UXデザインやHCDなどの立場からコメントし、意見を述べるようなことをしている。それに対してYouTubeでは、UXデザインやHCDに関する体系的な知識を伝えるということを目的としている。今更、U-Siteで「HCDとはそもそも何ぞや」のような話題を取り上げるつもりはないし、読者諸氏もそれを期待してはいないだろう。もちろん、斬新な視点からの切り込みであれば、そういう話題もアリだろうし、それならU-Siteが向いていると思うのだが、一般的な解説はYouTubeの方にまかせようと考えたわけである。
YouTubeとの日々
現在、YouTubeコンテンツの作成は、ちょっと大げさにいえば自分にとって一つの生きがいとなりつつある。収入にはならないものの、自分のアイデンティティがかかっているような気がしている、というとちょっと大げさかもしれないが。
ちなみに、作成にはおよそ2日間かかっている。まずベースになるPPTの作成、これに1日くらいかかる。PPTからFigmaに移行しようかとも思ったのだけど、面倒でPPTのままにしている。それからFilmoraで収録をする。この時にはできるだけ自分の話し癖に気をつけている…気をつけてはいるのだが、「あの」とか「…と」とか、書き起こしの段になって癖がでてしまっていることに気づくことが多い。基本的には一気通貫で収録をして、それからジングルと冒頭ページの画像を合成して先頭につける。このジングルは、バリ島で買ったガムラン用の鍵盤と、ミャンマーで買った銅鑼などを使って演奏したものである。稚拙なものではあるが、気にいって使いまわしている。動画ができたら、それをmp4にして保存し、RecCloud LightEditorで字幕を付ける。このソフト、割と認識率は高いのだが、それでも誤変換がでるのでその修正には結構手間がかかる。これで字幕付きmp4ファイルに出力してYouTubeにアップロードする。この時に、コメントをつけたり、検索キーワードをつけたりして、いよいよ完成である。ここまでで2日ということになる。
今後の目標
これまではHCDやユーザビリティなどの基本的な概念に関する解説が多かったが、そう遠くないうちに個別の話題に入ろうかと思っている。手技法の解説や心理学的バックグラウンドの説明などである。たとえば、YouTubeで「インタビュー」というキーワードを検索すると、とても多くの動画がヒットする。つまり、手技法などについても悩んでいる人は多く、世間のニーズは高いということだろう。かなり多数の関連動画を視聴してきたので、それらには無い視点を導入できるかも、と考えてはいる。まあ、出来栄えはアップしてからのお愉しみ、ということで…。