音声アシスタントに関する国際アンケート調査(2)

音声アシスタントをめぐる世界の状況

音声アシスタントに関する知見が豊富なロボットスタート様にお話を伺ったところ、音声アシスタントをめぐる様々な話題が出ました。市場が活性化する条件や、先進国とは異なったニーズがある地域、アメリカにおける新しい動きなどについて紹介します。

  • リサーチ事業部 三浦志保
  • 2020年6月15日

前回の記事では、日本はアメリカと中国に比べて音声アシスタントの利用率が低いこと、その要因として国民性や利用目的の違いが考えられることをご紹介しました。今回は前回に引き続き、イードが実施した日米中のアンケート調査の結果を見つつ、音声アシスタント市場に造詣が深いロボットスタート様と一緒に、音声アシスタントをめぐる状況について考えてみたいと思います。

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この対談は、2020年1月、ロボットスタート様のオフィスにお邪魔して実施しました。社内には様々なロボットたちが所狭しと並んでいます。

参加者

中橋さん
ロボットスタート株式会社 代表取締役社長
旭さん
ロボットスタート株式会社 営業部リーダー
貞平
株式会社イード リサーチ事業部 チーフコンサルタント
三浦
株式会社イード リサーチ事業部 リサーチャー ※聞き手

(以下、敬称略)

調査概要

手法
インターネットアンケート(アンケートパネルに配信)
回答者条件
20-40代男女
サンプルサイズ
日本:694s/アメリカ:362s/中国:341s
回収
性年代均等回収
実施時期
2019年12月11日~12月18日

中国や韓国は自国で音声アシスタントをつくっている

三浦:今回、(予算の都合もあり)日米中でアンケートを実施しましたが、他に気になる国はありますか?

旭:韓国は気になります。韓国は独自でスマートフォンや音声アシスタントをつくっているので。日本はアンケート結果で見たように、基本的には海外勢がつくった音声アシスタントを使っているから、環境が違います。

三浦:なるほど。

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【最もよく利用する音声アシスタント】 Qあなたが最もよく利用している(利用していた)AIアシスタントの機器は何ですか。

貞平:ドイツも気になりますよね。ヨーロッパ代表として、日米中との比較を見てみたい。

三浦:ドイツは独自の音声アシスタントはあるんでしょうか?

中橋:ドイツ独自の音声アシスタントはないと思います。

三浦:Mercedes-BenzやBMWなどの車載音声アシスタントだけでしょうか?

中橋:いや、そのどちらもベースはニュアンス・コミュニケーションズっていうアメリカの企業がつくっているから、ドイツ独自と言えるかどうかは微妙かと。

三浦:そうなんですね。あれ、でも先日実施した車載音声アシスタント比較実験ではMercedes-BenzとBMWの音声アシスタントは結構違う反応をしていましたよね?

中橋:もちろん、それぞれカスタマイズしているから、UXは違います。音声認識・自然言語処理においてニュアンスの技術が使われているということなので(正確には、ニュアンスから独立したセレンスの技術)。ちなみに大手自動車メーカーの多くは車載音声アシスタントにニュアンスの技術を使っているので、蓋を開けてみたらベースは同じというケースも多いです。

三浦:なるほど、興味深い話ですね。

インドやアフリカは音声アシスタントの潜在的ニーズが高い

三浦:他に気になる国はありますか?

旭:インドも気になります。インドのスマートフォンには、Google AssistantとAlexaがダブル搭載されているものがあったりして、メーカーが結構攻めているんです。なにしろ人口が多くて市場が大きいので。あと、安いガラケーも売れていて、独自の進化を遂げています。

三浦:ガラケーに音声アシスタントが搭載されているんですか?

旭:はい。安いガラケーに搭載されたりしています。

三浦:そうなんですね。

旭:インドではインターネットに接続していないガラケーを利用している人も多くて、その人たち向けて、(テレフォンサービスのように)無料の電話番号に電話をして尋ねると、電話口でGoogleアシスタントがサポートしてくれるというサービスが提供されているんです。識字率の低さとも関係していると思いますが。Googleが如何に本気でインド市場を取りに来ているのかが分かりますよね。

貞平:識字率で言うと、インドの貧しい層は識字率が低いから、実は音声アシスタントと相性がいいと思います。うちの5歳の息子もまだ文字入力はできないけど、音声入力ならできる。あとガラケーの画面は小さいから、いちいち入力して確認するより音声でやった方が快適という事情もありそうです。

三浦:なるほど、先進国とはまた違ったニーズがあるんですね。

旭:スマートフォンや音声入力の新たなターゲットを探しているメーカーの中には、アフリカに目をつけているところもあるみたいです。まだ開拓の余地のある市場なので。携帯電話の展示会であるMWC(モバイル・ワールド・コングレス)は、スペインで開催されて地理的にアフリカと近いということもあって、アフリカをターゲットにしているところもあったりします。

三浦:そうなんですね。

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中橋さん(奥) ロボットスタート株式会社 代表取締役社長
旭さん(手前) ロボットスタート株式会社 営業部リーダー

Google AssistantとAlexaが競合する国は市場が活性化する

中橋:インドに関して言うと、インドはGoogle(Google Assistant)とAmazon(Alexa)が両方入っていて、競争率が高いから音声アシスタント市場が成長しているという面もあります。インドの他にも、GoogleとAmazonが同時に入った国は、音声アシスタントのニーズがどんどん高まっています。どちらかが先に入って、先に陣地をとってしまった国は、なかなか成長しづらいんです。一度使い始めた音声アシスタントをそのまま使う人が多いし、一度陣地をとってしまえば、リプレイスされにくいので、競争が起きづらい。

三浦:なるほど、面白いですね。ユーザーとしては競争して成長していってくれた方が嬉しいですね。あと、言語の問題もありますか?やっぱりユーザーが多い方がデータもたくさんとれるし、音声アシスタントの性能もどんどん良くなっていくのかな、と思うのですが。

中橋:それはありますね。だから英語はとにかく有利だし、英語からの応用が簡単な言語も対応しやすい。

三浦:やっぱりそうなんですね。

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貞平(奥) 株式会社イード リサーチ事業部 チーフコンサルタント
三浦(手前) 株式会社イード リサーチ事業部 リサーチャー

エコシステムを制する者が音声アシスタント市場を制する?

三浦:今回のアンケートでは、日本やアメリカはSiriとGoogle Assistantを使う人が多いという結果でした。またアメリカは日本に比べてAlexaを使う人も多い。今後、音声アシスタント市場はどうなっていきそうでしょうか。例えば“このサービスは伸びそう”というようなことはありますでしょうか。

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再掲【最もよく利用する音声アシスタント】 Qあなたが最もよく利用している(利用していた)AIアシスタントの機器は何ですか。

中橋:Alexa(とGoogle Assistant)はスキルが色々あって、例えばアメリカはガレージのある家が多いと思いますが、そのガレージがAlexa対応になっていて、自動車に乗ったままシャッターの開け閉めができたりするんです。家のセキュリティの制御もできるし、便利なんだと思います。

貞平:家が大きいアメリカでは、特に離れたところから操作できるメリットも大きそうですね。

三浦:確かにそうですね。

中橋:つまり「環境」、エコシステムは大事だと思います。例えば前にアメリカで泊まったホテルで、Alexaで照明や目覚まし、音楽の操作ができて、家と同じように使えたので、便利だと思いました。基本的に、何かの音声アシスタントを使い始めたら、それをずっと使い続けたいと思う人は多いと思うんです。だから、今後の音声アシスタント市場を考えると、“エコシステムを制する者が市場を制する”と言えるかもしれません。つまり、いかに多くのデバイスで使えるようになるか。いかに多くのことができるようになるか。自動車で使う音声アシスタントも、できれば家で使っているものと同じものを使いたいですよね。

三浦:なるほど、確かにそうですね。

中橋:ただ一方で、新しい動きもあるんです。ぜひホームページを見てもらいたいんですが、「Project Connected Home over IP」という、アメリカの大手が手を組んで取り組んでいるプロジェクトがあります。これは簡単に言うと、AlexaでもSiriでもGoogle Assistantでも、ユーザーが好きなサービスを選んで使えるようなデバイスを作っていこうというものです。

三浦:それは、例えば今は、Amazon EchoではAlexaしか使えないというような縛りがあるけれど、その縛りがなくなるということでしょうか。

中橋:はい、ユーザーが好きな音声アシスタントを選べるようにしようということです。

三浦:それはいいですね。では、それが実現すると、先ほどのエコシステムの話はまたなくなって、純粋にソフトとして優れている音声アシスタントが選ばれるようになるということですね。もしくは、使い慣れているアシスタントとか。

中橋:ユーザーにとって便利だし、使いやすくなりますよね。このプロジェクトにはAppleとかGoogleとかが参加しているんですが、Amazonも参加していて、すごいなと思いました。Amazonは今市場で優位に立っているし、この取り組みはAmazonにとってデメリットになることもあると思うんですが、それでも参加しているのはさすがだなと。自信があるからこそかもしれないですが。

三浦:なるほど。今日は貴重なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。また機会があれば、ぜひお話しを聞かせてください。

まとめ

今回は、以下のような話が出ました。

  • 日本では海外勢がつくった音声アシスタントを使う人が多い一方、中国は自国でつくった音声アシスタントが主に使われている。韓国も自国で音声アシスタントを開発している。
  • インドやアフリカは音声アシスタントの潜在的ニーズが高い
  • Google AssistantとAlexaが競合する国は市場が活性化する
  • エコシステムを制する者が音声アシスタント市場を制する可能性がある。ただしアメリカでは、音声アシスタントの互換性がある(=好きな音声アシスタントを選んで使える)デバイスをつくる動きがある。

イードではこれからも、音声アシスタントの発展や普及につながるような取り組みを続けていきたいと思います。

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ロボットスタート様のオフィス

レポート販売のお知らせ

この記事で紹介した日米中のアンケート調査に加え、今回自動車用の音声アシスタント5機を対象に200問の問答実験を行い、各機の評価を行いました。2つの調査の詳細なデータを販売いたしますので、ご興味のある方は以下までご連絡ください。なお、ご購入いただいた場合、ご希望に応じて報告会を行います。

弊社プレスリリース:イードとロボットスタート、自動車向けAI音声アシスタントに関する調査テストを実施

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