情報アーキテクチャに起因するタスク失敗は相変わらず不利益

タスク成功率は、2004 年のユーザビリティ統計と比べると大きく上昇した。しかしそれにもかかわらず、ユーザがタスクを完遂できないケースがあり、その原因の大半は情報アーキテクチャ(IA)の出来の悪さにある。

「商品が見つからなければ購入できない」。これは、ウェブユーザビリティについて私が最初期に考案した標語のひとつである。この陳腐な言葉は、今日に至るも有効である。なぜなら、ウェブサイトやイントラネットのしかるべきページにたどりつけないことには、何も始まらないからである。

(いざユーザが自分の欲しいものを見つけるときには、コンテンツユーザビリティが重要となる。ユーザには、目的のページに表示された情報を理解し、気に入ってもらわなければならないからである。しかしその場合もやはり、目的のページにたどりつくことがまずは大切な一歩となる)

ウェブユーザビリティ指標:2004 年と 2009 年との比較

我々は 2004 年に、第 1 回「ウェブユーザビリティの基本ガイドライン」セミナーに向けて 25 カ所のウェブサイトを対象にユーザテストをおこない、その結果をもとに、ユーザがタスクを完遂できない原因を分析した(以来、新たな調査で得たビデオクリップや統計情報を追加するなどして、何度かセミナーの更新をおこなってきたが、「~の基本~」というタイトルの示すとおり、2004 年版のガイドラインの大半は、現在でも有効なほど過不足なく基本を押さえたものであった)。

今年は、新たな「 情報アーキテクチャ(IA)に関する2日間セミナー」に向け、24 カ所のウェブサイトを対象に同じように広範な調査をおこなった。このテーマをめぐってはほかにも多くのセミナーがあるが、我々のセミナーは、現実のユーザにとって何が実際に有効に働くのかを調べた実証的調査を下敷きにしている。この調査の主たる目的は、ユーザビリティガイドラインを策定することであり、またプレゼンテーション用のビデオクリップを用意することであったが、2004 年に開発した分類方式を当てはめることにより、ユーザのおこなったタスクの結果についても分析した。

(ユーザビリティにからむ問題の分類方法や、そうした問題の程度の判定について詳しくは、共著 Prioritizing Web Usability 、邦訳『新ウェブ・ユーザビリティ』を参照)
今回の調査で一番うれしかったのは、以下の数字が物語るように、テストした各サイトの全体で平均して成功率がみごとに上昇していたことである。

  • 66 %(2004 年)
  • 81 %(2009 年)

これはとりもなおさず、この数年間にウェブユーザビリティが根づいた証である。また、いたずらに会社のお金を費やすだけで事業に貢献しない「クールなサイト」の立ち上げにインターネットマネージャたちがますます二の足を踏むようになってきたとも言える。

それぞれの上昇率はバラツキが顕著である。サイトマップのように、最近はウェブデザイナにとってちょっとした継子になっているものは上昇率がごくわずかで、店舗検索機能のように、「カチャカチャ・チーン」とキャッシュレジスタを鳴らして売上に直結するものは上昇率が非常に高い(なんと言っても、店舗が見つからなければ買物にいけないのである)。

我々のコンサルティングプロジェクトでもおおむね似たようなパターンを示しており、ウェブサイトは以前よりも確かに使いやすくなっている。これはイントラネットも同じである。同じどころか、イントラネットは最初のユーザビリティがあまりにひどかったこともあって、使いやすくなった度合で言えば、イントラネットのほうがウェブサイトよりも大きい。

IA の問題が依然としてタスク完遂を阻害

総じてユーザビリティは改善されたが、事業目標に見合ったウェブサイトの構築を阻む要因として、IA はひどく目立つ存在になってきている。我々はウェブサイトを対象に広範な調査を 2 回おこない、ユーザがタスクを試行したときにどうなるかを調べた。その結果を以下の円グラフに示す。

さまざまなウェブサイトをユーザビリティテストにかけたときのタスクの実行結果:2004 年と 2009 年との比較

確かに成功率は上がった。しかも IA に起因するものを除けば、ユーザビリティがらみの問題に起因する失敗率も激減している。しかし次の数字に見るように、IAの問題が原因でユーザがタスクを完遂できない率は、わずかしか減っていない。

  • 2004 年には、試行したタスクのうち 14 % が、IA の問題が原因で失敗した。
  • 2009 年には、試行したタスクのうち 10 % が、IA の問題が原因で失敗した。

出来の悪い IA は、サイト内を移動する際の障害物であるため、今やタスクの完遂を阻む最大の原因となっている。使い勝手の悪いサイトであっても、これといった動機がユーザにあれば、たとえ思いどおりにゆかなくても、もう一度トライしてみようとは思うかもしれない。しかし、検索機能が貧弱なせいで堂々巡りを強いられたり無人地帯に案内されたりすれば、ユーザはそのサイトに見切りをつけて別のサイトに移動する。現在、IA の欠陥のせいで多額の出費を強いられているのは、そういうわけなのである。

成功率上昇の次なる課題

成功率は、高いに越したことはないが、ユーザビリティを高めるための出発点でしかない。ユーザがサイトを使ってくれないことには話にならない。しかし、何か処理をするのに根気が必要になるようでは、ユーザはそのサイトで取引をしてくれない。ユーザにサイトを気に入ってもらう必要もある。

ユーザビリティにかかわる我々は今後も、タスク失敗の要因として残された問題点をつぶしてゆかなければならない。しかし各サイトは、ユーザーが楽しめるものでもなければならない。そのためには、サイトデザインにからむあらゆる要素の連携を図らなければならない。インタラクションデザインは、ひとつでもダメな環があれば用をなさない鎖のようなものだからである。

最近は、テストでユーザビリティの問題が見つかっても、その大半はサイトの使用を阻むようなものではない。しかしユーザをイライラさせているのは確かである。残念なことに、出来の悪いウェブデザインはまだまだたくさんあって、そのせいで、操作に時間がかかったり、ユーザをまごつかせたり、情報の理解を困難にしたりしている。ユーザビリティにからむそうした多くの問題については、10年あまりわたって文字どおり記録に残してきた(たとえば新・ウェブデザインの間違いトップ10 を見てほしい)。

ユーザがウェブサイトから出てゆくのは、思いどおりの操作が最後までできないときだけではない。使っていて面白くない場合もサイトから出てゆくのである。したがって、IA に起因するタスク失敗率がわずか 10 %であっても、IA を良くすれば売上の伸び率は 10 %どころでは収まらない。我々はユーザビリティの投資対効果(ROI)に関する研究をおこなったが、それによると、ビジネス指標は約 80 %高くなる可能性がある。ユーザのイライラ感が減って、そのぶんユーザがサイトにとどまるようになれば、70 %も利益が増える計算になるわけである。

大半のサイトにとってIAの改善は最優先課題である(もっとも、非営利サイトにとっての問題としては第 2 位の問題でしかない)。IA の問題を解消するのは必ずしも容易ではない。しかし IA の出来が悪ければ、ユーザはサイトを出ていってしまう。その損失を考えれば、IA の問題を解消する価値は十分にある。

関連記事トップ 10 リスト

以下に示すトップ 10 リストのほとんどは、今日のウェブサイトにもまだかなり該当する。新しい間違いが増えたからといって、古い間違いがなくなるわけではないが、それらを目にする機会は幸いも減ってきている。

2009 年 4 月 16 日