Webで広告がうまくいかないわけ

サイトによって、その人気度は激しく違う。このため、広告から十分な収入を得ることができるのは上位0.01%のウェブサイトだけとなる。もっと大きな目で見れば、広告はウェブの成功にはほとんど無関係でもある。現在、ウェブ広告がメディアの注目を集めているが、それには2つの理由がある。

  • 今のところ、広告は、サイトが直接収入を得る唯一の方法である(直販を行っているサイトを除く)。マイクロペイメント(ページ単位で視聴ごとに課金)や、Amazon.comが彼らのサイトに人を紹介してくれたサイトに支払っているリンク委託料のようなこれに代わる新たな収入モデルが登場すれば状況も変わってくるだろう。
  • オールドメディアに属する人のほとんどは、テレビに代表されるマスメディアのビジネスモデルしか理解できない。広告代理店のものわかりが悪いのは仕方ないとしても、かなりの数のいわゆる「ニューメディアアナリスト」までが、オールドメディア的視点しか持てないでいる。彼らはウェブを戦略的に見ることができず、純粋に「視聴率(eyeballs)」やテレビのメタファー(ウェブのメタファーとしては電話の方がふさわしいし、1対1のネットワークという可能性にも近いものがあるにも関わらず)から分析することしかできない。

無駄遣いとは知りながら

広告業界で昔からよく言うセリフにこんなのがある。「広告費の半分が無駄、というのはよくわかっている。問題はどっちの半分かだ!」。ウェブでは答えははっきりしている。どの広告からどれだけのビジターがサイトに来たか追跡できるからである。実際、もっとやろうと思うなら、サイト観光客がお金を払って顧客になるところまで追いかける事だってできる。サイトにとって永続的な値打ちがあるのは、ロイアリティの高いユーザだけだから、単に視聴率を測るだけのCPMなどにお金を払うべきではない。

ウェブ広告の価値は、それによって獲得した新たなサイトユーザがビジネス上にもたらす価値で測るべきだ。この価値は、通常非常に小さい。ウェブ広告が役に立たず、ウェブの未来への貢献度という点でも最小にとどまるだろうというのは、これが原因だ。単純なクリック率は、通常1%程度。つまり広告を見た人の99%は、あえてクリックしようとは思わないということだ。クリックさせるという点で成功しているウェブ広告は驚くほど少ない。広告はハイパーテキストリンクの一端であって、リンク先にあるものの価値に期待させることが重要なのだが、彼らはまずこのことを理解しなくてはならない。ハイパーテキスト理論では、これを出発点のレトリックと呼んでいる。

広告ハイパーテキストリンクの向こう側には、結末のページが待っている。たいていの場合、こう言ったページにはかなりがっかりさせられるものが多いし、ユーザとしてはすぐに元に戻りたくなってしまう。クリック率ですら、ウェブ広告の価値尺度としてはお粗末なものというしかない。制作物がお客を魅惑する能力はこれで測れるかもしれないが、ビジネスを成立させる能力は測れないからだ。

認識的メディア

ウェブとテレビは相当違う。それはもっぱら認識的なメディアであり、対するテレビは情緒的なメディアなのだ。このため、従来型の広告、つまり派手で、製品の表面的な品質を宣伝するのには、テレビの方がよほど適している。テレビを見ている間は、人間はほとんど植物状態であり、コマーシャルの第一の目的は、ユーザの手をリモコンから遠ざけ、できるだけ操作させないようにすることである。ユーザが見てくれている限りは、製品の品質の高さを吹き込むことができ、「優れています」という以上のことはほとんど何も言う必要がない。

テレビは暖かく、ウェブは冷たい。それはユーザ主導の体験であり、そこで次にどこへ行くかを主体的に決めるのはユーザである。ユーザは通常何らかの目的を持ってウェブを利用しており、広告によってその目的からそれてしまうことはめったにありえない(クリック率が非常に低いのはこれがひとつの原因だ)。能動的にユーザが関与することが、ウェブをより認知的なものにしている。どのハイパーテキストリンクをクリックしたらいいのか、どうナビゲートしたらいいのかを考えるのはユーザだからである。ウェブが、純粋に情緒的な広告には向いていないというのは、ここにも原因がある。ユーザは「体験する」ためではなく、何かを成し遂げるためにウェブを利用しているのである。ウェブは単なる「顧客志向の」メディアではない。顧客優位のメディアなのだ。Backボタンはユーザが握っている。逆らっても無駄だ。その気もないユーザをだまして広告に釣り込むことはできない。(実際には、ユーザをだまそうとする新しい技術も出てきている。だが、私は予告しておくが、そのようなサイトはユーザにそっぽを向かれるだろう。つまるところ、顧客フレンドリーなサイトは他にいくらでもあるのだから)。

現状、ダウンロード時間が遅いことも、情緒的な広告にとって手痛い。テレビコマーシャルほどの高品質で伝えられるならブランド広告も意味があるだろう。遅れることもないし、ユーザ側はじっと見ているだけですむ。ウェブではあらゆるものが遅い。派手なブランド広告を待つ気はないだろう。

成功するマーケティング

よそのサイトに広告を打ってもあまりいいことはないが、効果的なマーケティングのためにウェブを利用する方法はたくさんある。もっとも重要なのは企業ウェブサイトだ。サイト全体が、企業の製品を宣伝するために使われる。このようなサイトは売上第一ではだめで、顧客サポートとサービスに注力すべきだ。この中には購買プロセスを促進するための製品スペックやサポート情報が含まれる。言い換えると、顧客の購買を補助せよ。強引な売り込みはやめようということである。

バナー広告は、このような企業サイトに良質なユーザを誘導する上で、ある程度の効果がある。だが、トラフィックを増やすには他にも方法はたくさんある。ウェブで実際にモノを買ったことがある人を対象にした調査によると、広告経由で販売店サイトにたどり着いた購入客は、たった12%しかいなかった。買物客の88%は、それ以外の方法で来ているのだ。検索エンジンとハイパーテキストリンクは、もっとも重要な仕組みだ。コンテンツ豊富なページを作っておけば、他のサイトがリンクしてくれる。プレスリリースを始めとした広報活動すべてに、適切なURLを入れておくことでこのようなリンクを促進することができる。印刷広告には必ずURLを入れておこう(広告メッセージに直接関連のあるページにリンクすること。ホームページへのリンクはやめよう)。

最後に、印刷した新聞によくある項目別三行広告はウェブの方がうまくいく。よって、ウェブベースでの三行広告には明るい未来が期待できると予想する。ウェブに完璧にマッチした広告といえる。

1998年7月補足:あいかわらず広告はウェブではうまくいっていない。このことに気づきだす人も増えてきた。UPSIDE誌によるとクリック率は今や0.7%。ウェブではブランド広告もうまくいかず、唯一、成功しているのは物品を購入できるEコマースサイトだけだそうだ。

1998年10月追加コメント:NetRationgによると、クリック率は今や0.5%にまで低下したそうだ。私がこのコラムを書いて以来、1年でクリック率は半減した。

1997年9月1日

公開: 1997年9月1日 (原文:1997年9月1日)
著者: Jakob Nielsen
原文:except for classified ads which are better online than in print

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