定性ユーザー調査におけるファネル手法

ファネル手法は、ユーザーインタビューやユーザビリティテストで用いられ、妥当性を損なうことなく豊富な知見を得ることを可能にする。

ファネル手法は、定性的なインタビューが調査手法として登場したときから存在する手法で、範囲の広いオープンエンド型(自由回答形式)の質問をしてから、徐々に範囲を狭めたオープンエンドの質問をしていき、さらに、クローズド型(選択式)の質問をするというものだ。

広い範囲から始めて、より具体的にしていくというこの考え方は、ユーザーインタビュー以外の種類の調査にも有益である。この手法は、以下のような項目の順序を整理する役に立つ:

  • インタビューの質問
  • フォローアップの質問
  • ユーザビリティのタスク
  • マルチメソッド調査における調査

この記事では、ユーザーインタビューモデレーターありのユーザビリティテストでのファネル手法の利用方法について説明する。

なぜファネル手法と呼ばれるのか

ファネル(訳注:漏斗)は、上が広く、下が狭くなっていて、開口部の狭い容器(ボトルや瓶など)に中身(油や米など)を入れやすい。

同様に、ユーザー調査のファネル手法も広いものから狭いものへ、つまり、全般的なものから具体的なものへ進んでいくというものだ。ユーザーインタビューやユーザビリティテストのセッションでは、範囲の広い探索的な質問やタスクから始めて、範囲を絞った具体的な質問やタスクを導入する必要があるということで、ファネルは比喩としてふさわしいのである。

ファネル手法の目的は、ユーザーの行動や認識にできるだけ影響を与えないようにすることにある。調査セッションの早い段階で、具体的な質問をしたり、タスクを与えたりすると、バイアスがかかり、重要なデータを取得しそこなう可能性があるからだ。

ファネルは、はじめは広いが徐々に狭くなっていく。定性的なインタビューやユーザビリティテストでは、範囲の広い探索的な質問やタスクから始めると、ユーザーの自然な思考や行動について偏りのない情報を大量に取得することができる。そして、具体的な質問やタスクを導入していくと、集められる情報の量は減るが、より具体的で詳細なデータを収集することができる。

ユーザーインタビューにおけるファネル手法

通常、ユーザーインタビューのインタビューガイドは、参加者に関連するストーリーや経験を話してもらうための5〜8個のオープンエンドの質問で構成される。その後には、フォローアップの質問が続くが、この質問はオープンエンド型でもクローズド型でもよい。

インタビューは、「前回、映画のチケットを買ったときのことについて教えてください」のような範囲の広いオープンエンドの質問から始める必要がある。

範囲の広いオープンエンドの質問から始めることで、以下のようなことが可能になるからだ:

  • 参加者が会話に慣れる。
  • 参加者がストーリーを話そうとするようになる。
  • 新しい予想外の情報を大量に引き出せる。
  • リサーチャーが参加者にプライミングすることを避けられる。

参加者が回答したら、インタビュアーは、参加者の回答のうちのリサーチャーがさらに知りたい部分を掘り下げるために、オープンエンドのフォローアップ質問(深掘り質問という)をする必要がある。以下のような質問がこれにあたる:

  • もっと詳しく教えてください。
  • それはどういう意味ですか。
  • それについてどう思いますか。
  • なぜそう思うのですか。

また、インタビュアーは、以下のようなクローズドな質問も取り入れて、参加者が省略した付加的な情報や詳細も収集するとよい。

  • この映画を見たのはいつですか。
  • おひとりで行ったのですか。
  • 映画の長さはどれくらいでしたか。

インタビューガイドで設定した主な質問ごとに、インタビュアーは、範囲の広いオープンエンドの質問からクローズドな質問に進んでいく。そして、ガイドにある新しい質問ごとに、このファネル型のプロセスを繰り返す。

インタビューの中心になる質問はどれも、通常、範囲の広いオープンエンドなものである。それに続いて、オープンエンドのフォローアップ質問を行い、徐々にクローズドな質問を増やしていく。インタビューで新しい質問をするたびに、このファネルプロセスを繰り返す。

ファネル手法を活用すると、詳細な情報を収集する前に新しいことを知るためのスペースを確保することができる。これは、ユーザーと信頼関係を構築して、彼らが実際に何を考えているかをプライミングすることなく知ることのできる最良のインタビュー方法なのである。

定性的ユーザビリティテストにおけるファネル手法

定性的なユーザビリティテストでは、以下のような作業にファネルという考え方を活用することができる:

  • タスクの作成と順序づけ
  • 参加者のタスク完了後の、フォローアップ質問の順序の考案

タスクのファネル化

広範なものから具体的なものに進んでいくという同じプロセスを定性的なユーザビリティテストのタスクの構築と順序づけにも適用することが可能だ。広範な探索的タスク(ユーザーが自分でどのように行動するかがわかる)は、普段なら自分では探さないものを探すように、また、やらないことをやるようにユーザーに求める、具体的で指示的なタスクの前に与える必要がある。

ファネル手法は、迷路の中のネズミにもたとえられる。ネズミが大きな迷路の中でチーズを見つけることができるかどうか、ある研究者が研究室で調べるとしよう。まず彼はネズミを迷路に入れて、ネズミがチーズを見つけられるかどうかを確認することから始めるだろう。だが、しばらくしても、ネズミがチーズにたどり着かない場合は、不正解の通路を徐々に封鎖していく。そうすることで、ネズミがチーズを見つける可能性を高めることができるからだ。

ファネル手法の適用とは、迷路の中でネズミを誘導するようなものでもある。まずネズミが自分でチーズへの道を見つけることができるかどうかを確認してから、必要に応じて経路を塞いでいくからである。

この比喩では、ネズミは参加者であり、チーズは我々が調査したいデザインの要素にあたる。参加者が自力でそこにたどり着けるかどうかをまず確認するほうがよいが、ちょっとだけ後押ししてあげなくてはならないこともある。

参加者に与えるタスク理論的根拠
タスク1:このサイトを使って、作りたいレシピがあるかどうかを確認してください。広範な探索的タスク:タスクの終点をユーザーが定義し、自分なりのやり方でタスクを完了できるようにしている。
タスク2:このサイトを利用して、夕食に作りたいと思う手軽なレシピを見つけてください。指示のあるタスク:このタスクでは、終点と成功の基準があらかじめ定義されている。参加者に普段は探さないようなものを見つけてもらおうとしているからである。
タスク3:検索を利用して、チキンヌードルスープのレシピを見つけてください。指示のあるタスク:このタスクでは、特定の機能を使って、ユーザーにタスクを実行してもらう。ユーザーが普段、探さないようなものを探してもらい、使わないような機能を使ってもらおうとしているからである。

タスク3から始めて、逆の順序で進めると、タスク1とタスク2でどのように行動するとよいかを参加者に事前に教えてしまうことになる。そのため、彼らが指示のない状態で独りでどのように物事を進めるのかを知る機会を逃す可能性がある。しかし、タスクをファネル化して、広範な探索的タスクで始めてから、指示のあるタスクを導入すれば、行動に関する有効なデータを確実に得ることができる。

広範な探索的タスクから始めると、ユーザーの自然な行動を知ることができる。そして、指示のあるタスクを与えることで、彼らがどのように物事に対処するかに関する情報は減るが、特定のUI要素についての情報をより多く取得することができる。

ファネル手法は、段階的なタスクの根拠になっている考え方である。段階的なタスクとは、範囲の広いタスクから開始して、必要に応じてより具体的な指示を与えていく多段階のタスクのことだ。

たとえば、ECサイトの比較機能を調べたいとしよう。

参加者に与えるタスク理論的根拠
タスク4:購入したいヘッドフォンを選び、カートに入れてください。広範なタスク:参加者にごく自然なタスクを与え、タスクを実行する途中で我々が調べたい機能を偶然使ってくれることを期待する。
タスク4.1:友人がApple AirpodsかApple Airpods Proの購入を検討しているのですが、どちらを買うか迷っています。このサイトを使って、友人にどちらを薦めるかを決め、その理由も教えてください。参加者が自力で自然に比較機能を発見して利用しない場合、このようなフォローアップの指示を与える。このタスクの目標は、参加者をやや不自然かもしれないが、その機能を使ってもらえそうな特定の状況に置くことである。
タスク4.2:ページをあちこち行き来することなく、その2つのヘッドフォンを比較する方法はないでしょうか。自分たちが調べたい機能をそれでもまだ参加者が使ってくれない場合は、さらに直接的な指示を出す。この例では、比較機能があることを強くほのめかして、参加者にそれを使ってもらおうとしている。

上記の段階的なタスクの例で、タスク4.2までたどり着いた場合、その機能は発見しやすさまたは望ましさの問題があると結論づけることができるかもしれない。しかしながら、このレベルまで具体性を提供することで、こうした結論を出すとともに、その機能自体にインタラクションデザインの問題がないかどうかを確認する機会も得られることになる。

フォローアップ質問のファネル化

定性的なユーザビリティテストでは、進行役はフォローアップの質問をするときにファネル手法を利用する。たとえば、参加者がタスクを終えた後に以下のような質問をすることがあるだろう:

参加者に尋ねる質問理論的根拠
質問1:こうした作業をWebサイトで行うことについて何かお考えはありますか。オープンエンドで範囲の広いこの質問によって、参加者は完了したタスクに関連することを何でも話しやすくなる。
質問2:簡単だったことや難しかったことがありましたか。オープンエンドでより具体的なこの質問は、使いやすさに焦点を当てたものだ。ここでは、使ってみて良かったこと、苦労したことを思い出してくれるようにユーザーに促している。
質問3:利用した検索フィルターについてどう思いましたか。このオープンエンドの質問はさらに具体的だ。ここでは、タスクで利用した特定のUI要素にユーザーの注意を喚起している。

上記の例では、広範なオープンエンドの質問から始めて、フィードバックをより必要としているUI要素に関連する具体的なオープンエンドの質問に範囲を狭めていっている。

質問3から始めて、逆の方向に進むべきではない。なぜなら、促されたからではなく、参加者が自発的に情報を提供してくれるほうが望ましいからだ。具体的な指示を出さなくても、参加者から有機的なフィードバックがあることを我々は期待している。頼んでいないにもかかわらず出てきたフィードバックは、参加者の真の意見である可能性が高いからである。参加者に特定の要素に関するフィードバックを求めることは危険でもある。参加者がリサーチャーのために単に意見をでっち上げる可能性は常にあるものだ。たとえば、質問1に対する回答で、参加者から、検索フィルターが本当に役に立った、と言われたとしたら、質問3に対して同様の回答が返ってきた場合よりも、彼らが本当にそう考えているとより確信を持つことができる。

要約

ファネル手法は、ユーザーインタビューやユーザビリティテストで質問やタスクを行うときに利用できる。その場合には、広範なオープンエンドの質問やタスクから始めて、より具体的な質問やタスクを導入するとよい。こうしたアプローチを取ることで、重要な情報を見逃さなくなるし、早すぎるタイミングで参加者に指示を出したり、情報を与えたりすることもなくなるだろう。

インタビューとユーザビリティテストの司会進行の詳細については、5-day course on Qualitative ResearchまたはUser InterviewsおよびUsability Testingに関する1日コースを検討してみてほしい。