ステークホルダーと行うUXリサーチワークショップ

UXリサーチワークショップには3つの種類がある。これは、チームがUXリサーチを理解し、ユーザーへの共感を築き、知見をデザインコンセプトに活用するのに役立つ。

我々のライブ形式のオンラインUXトレーニングイベントの1つとして最近実施した「Facilitating UX Workshops」コースの後、ある参加者が、既存のユーザー調査を対象とするワークショップをどのように実施すればよいかと尋ねてきた。ワークショップ参加者は調査に直接触れるべきなのか、そして、どのようなアクティビティが効果的なのか。多くのUXチームは、調査を皆が利用しやすいものにするのに苦労している。この記事では、ステークホルダーが理解し、共感し、よりよい成果を達成する助けとなる体験型のアクティビティを通じて「調査をワークショップ形式で共有する」実践的な方法を紹介する。

UXリサーチワークショップとは

価値のある調査も、体験するのではなく、(ときにはメールで送られる静的なドキュメントによって)ただ説明されるだけだと、ステークホルダーがその調査結果を自分ごととして理解することはほとんどない。一方、リサーチワークショップを開催すれば、そうした人々を調査に参加させることができる。

リサーチワークショップは、参加者がUXリサーチを自分ごととして理解し、活用できるようにすることを目的としている。そこでのゴールは、調査のアウトプット(データ、調査結果、レポート)を、共通の理解(知見、共感、認識の一致)へと移行させることである。

この説明に当てはまるリサーチワークショップには、大きく3つのカテゴリーがある:

  • 調査共有ワークショップ:調査の知見についての理解を促し、既存の調査結果を一緒に解釈するための、構造化されたセッション。
  • 共感ワークショップ:ユーザー調査に基づいたアクティビティを通じて、参加者がユーザーとつながりを持てるようにするワークショップ。
  • 調査活用ワークショップ:対象範囲、ロードマップ、またはデザイン方針に影響を与えるために、構造化された方法に沿って知見を協働で活用するワークショップ。

場合によっては、2つ以上のタイプを組み合わせたハイブリッドワークショップを実施するほうがよいこともある。

調査共有ワークショップ

ゴール:ユーザー調査についての共通理解を築く

タイミング:調査を実施し、調査結果を共有する準備が整ったあと

調査チームがすでに相当量の作業を行っている場合、こうしたセッションは、調査からわかったことをPDFで読むだけの場合よりも、はるかに主体的な方法で、咀嚼し、理解できるようにする。

このタイプのワークショップは、知見に対する当事者意識自分ごととして関わる姿勢を生み出す。参加者が調査結果を受動的に受け取るのではなく、それらを解釈し、結果同士を関連づけることで、その知見に対する認識がしっかり一致して、結果への確信が強まり、あとで想起しやすくなるからである。

調査共有ワークショップで行うアクティビティの例として、インタラクティブギャラリーウォーク、知見の発見、想定の比較検討の3つを挙げる。

インタラクティブギャラリーウォーク

ある部屋に足を踏み入れたら、すべての壁が印刷されたユーザー調査の資料(たとえば、生の発言、調査でわかったこと、ジャーニーマップペルソナのような既存の成果物、フィールドワークの写真など)で埋め尽くされていたと想像してみてほしい。ステークホルダーは、展示の来場者のようにその空間を歩き回り、付箋にメモを書いたり、主要な資料のそばに置かれた問いかけ(たとえば、「どんなことが意外か」や「これを見てどのような疑問が浮かぶか」)に答えたりする。

20~30分ほど見て回った後、参加者は中央のテーブルに集まる。ファシリテーターはディスカッションを進行し、参加者の気づき、予想外のパターン、残っている疑問を全員の共有スペースにまとめる。テーマが浮かび上がってきたら、それらをグループ化し、ラベルを付けていく。

このプロセスにより、単なる静的な報告が、好奇心を刺激し、参加者全員での考察を促し、新たな探究の糸口となる、没入感のある協働体験へと変わる。

知見の発見

このアクティビティでは、参加者はユーザーデータ(ユーザビリティテスト直接観察から得られた発言や観察結果など)を直接扱い、参加者全員でテーマを明らかにする。

参加者は、カードや付箋に書かれた短い記述(全体で50~60件程度)を用いて作業する。親和図法により、類似した項目をグループ化し、重なり合う部分について話し合いながら、関連するアイデアを統合していく。パターンが浮かび上がったら、それぞれのクラスターに、その本質をとらえた短いフレーズ(たとえば、「オンボーディング中の不安」や「自分でコントロールできる状態を保つために回避策に頼る」)のラベルを付ける。

ファシリテーターは、「これらを結びつけているものは何か」や「どのテーマが最も重要そうか」といった質問をすることで、考察を促す。このプロセスを通じて、ステークホルダーは結論を伝えられるのではなく、自分たちで知見を発見し、それによって調査に対する理解と信頼を深める。

想定の比較検討

調査結果を提示する前に、ファシリテーターは、「ユーザーは何を最も重視していると思うか」や「ユーザーはどこで苦労したり、不満を感じたりするか」といった質問をすることで、参加者がユーザーについてすでに知っていると「思っている」ことを挙げてもらう。

ファシリテーターは想定を記録し(たとえば、「ユーザーが最も重視するのは速さである」や「人々はレコメンデーションを信頼しない」など)、グループは浮かび上がってきたテーマ、視点の違い、そうした考えがどこから来ているのかについて話し合う。実際の調査の知見が共有された後、グループはそうした想定を見直し、どれが裏づけられ、どれが覆され、どれが不完全だったのかを検討する。

この振り返りのアクティビティは、チームが自分たちのバイアスに気づき、好奇心を育み、オープンな姿勢で調査に向き合う助けとなる。また、ユーザーについての考え方を方向づける能動的な学習を促す。

共感ワークショップ

ゴール:参加者がユーザーと感情面でのつながりを築くのを支援する

タイミング:ユーザー調査の内容が参加者に共有されたあと

ユーザーリサーチャーは、ユーザーとの直接のやり取りを通じてユーザーへの共感を自然に育むものだ。ユーザーがタスクを完了するのに苦労したり、インタフェース内で迷子になったりする様子を見ると、我々はユーザーの苛立ちや切迫感を「感じ取る」。しかし、そうした瞬間がレポートやプレゼンテーションに変換されると、その感情面のコンテキストの多くが失われてしまう。

こうしたセッションでは、調査に人間味を持たせる体験型の手法を用いる。参加者に積極的な参加を促し、あらゆるデータポイントの背後には、目標や不満、感情を持つ実際の人間がいることを思い出してもらう。

共感ワークショップで行うアクティビティの例として、ペルソナウォークスルー、ジャーニーマッピング、共感マッピングの3つを挙げる。

ペルソナウォークスルー

このセッションは基本的に、参加者にユーザーペルソナの「立場に立って」もらい、その人物になったつもりでプロダクトやサービスを体験してもらう、軽いロールプレイングアクティビティである。

参加者は小グループに分かれ、各グループにはペルソナ(理想的には、実際のユーザー調査に基づいたもの)が割り当てられる。ペルソナのコンテキストと目標を把握した後、各グループはその役になりきって、タスクシナリオユーザーフロー、デザインコンセプトを順を追ってたどる。その過程で、グループはそのペルソナとして、反応、不満、動機について話し合い、記録する(たとえば、「この選択肢に戸惑う」や「ここにこの情報があって安心した」など)。

その後、各グループは自分たちが担当したペルソナが体験した内容を全体に共有し、主なペインポイントと感情について皆で話し合う。ファシリテーターは、繰り返し出てくるテーマ、感情、食い違いを全員で見られる場所に記録する。

ユーザーの立場に身を置くことで、参加者はユーザーの不満やニーズをじかに感じ取り、実在する人間の体験と感情面でつながりやすくなる。

ジャーニーマッピング

ジャーニーマッピングワークショップは、チームがユーザーの視点からエンドツーエンドの体験(つまり、カスタマージャーニーを可視化することで、感情の高まりや落ち込み、ニーズ、ペインポイントを特定し、そうした瞬間を1つのつながりのあるストーリーにまとめる助けとなる。

参加者には、ジャーニーの各段階における主要な調査の知見とタッチポイントが提供される(あるいは、リソースにさらに余裕があれば、ユーザー本人をワークショップに招いてもよい)。参加者はグループで、事前に選定されたジャーニーの各ステップでユーザーが行っていること、考えていること、感じていることを埋めていき、ユーザーとして、実際にその体験をするとはどのようなものか、を明らかにする。

ジャーニーをマップ化したら、ファシリテーターは、最も大きな感情の落ち込み、ニーズが満たされていない箇所、改善機会についてディスカッションを進行する。チームは、色分けや記号を使ってペインポイントを明示し、最も重点的に取り組む必要がある領域に優先順位を付ける。

ステークホルダーは、ユーザーの体験に感情的に共感するのに苦労することが多い。これは、ステークホルダーの業務が、単一のチャネルや機能、「オンボーディング」のような1つのフェーズなど、その体験のごく一部にしか関わっていないためである。ジャーニーマッピングは、各人の業務がより広範な体験にどのように影響し、ユーザーの感情的なジャーニーにどのように寄与するかを示すことで、そうしたサイロを解消する助けとなる。

共感マッピング

共感マッピングは、1つのビジュアルにユーザーが言うこと、考えること、行うこと、感じることをまとめるための、シンプルだが強力なツールである。これにより、調査に直接関与していなかった人々もユーザーをよりよく理解し、ユーザーとつながることができるようになり、その結果、ディスカッションや意思決定の場で、ユーザーのニーズを代弁し、優先できるようになる。

共感マップは、1人のユーザーに焦点を当てることも(1人の視点を探るため)、複数の調査参加者から集約された見解を表現し、ユーザータイプやペルソナ内のパターンをとらえることもできる。

参加者は小グループで作業し、調査の抜粋、発言、観察結果を用いて、共感マップの各象限(「言うこと」、「考えること」、「行うこと」、「感じること」)を埋めていく。マップが完成したら、パターンを特定し、そうした知見がユーザーの視点、動機、行動にどのような影響を与える可能性があるかについて話し合う。

調査データを統合するアクティビティとは異なり、ここでのゴールは、視野を広げ、感情面での理解を深めることである。ユーザーの内面世界を1つのビジュアルで俯瞰することで、チームが感情面と認知面の両方でユーザーと結びつきやすくなり、共感が深まり、データの背後にある人間的なコンテキストがより明確になる。

調査活用ワークショップ

ゴール:調査を、アイデアやコンセプト、実行に移せる優先事項に変換する

タイミング:参加者が調査について共通理解を築き、ユーザーと感情面でつながったあと

ワークショップ参加者の調査についての認識が一致し、その背後にいるユーザーと感情面でつながったら、次のステップは、そうした知見を具体的なデザイン方針や戦略に変換することである。このセッションは、多くの場合、アイデア出しのアクティビティ優先順位づけのアクティビティを組み合わせ、アイデアや方向性の案を出してから、それらの中でインパクトが最も大きなものを見極める段階へと進められる。

調査活用ワークショップで行うアクティビティの例として、機会マッピング、「How Might We」(どうすれば我々はできるか)によるアイデア出し、デザインスタジオスケッチングの3つを挙げる。

機会マッピング

機会マッピングは、調査の知見から、体験を改善する最も重要な機会がどこにあるかを特定するのに役立つ。この演習は、問題を「どのように」解決するかを決める前に、創造的なエネルギーをどこに集中させるべきかを明らかにすることで、調査の理解とアイデア出しの間のギャップを埋めるものである。

ジャーニーマッピングや共感マッピングのワークショップを終えたばかりで、いくつかの重要なテーマ(たとえば、「設定が複雑すぎるように感じられ、ユーザーがその途中でやめてしまう」や「ほとんどのユーザーが価格体系を理解していない」)が明らかになったと想像してみてほしい。参加者は小グループに分かれて、それぞれのテーマについて話し合い、それを特定のデザイン案を前提としない機会領域、すなわち「新規ユーザー向けのアカウント設定を簡素化する」や「ジャーニーの早い段階で価格の見通しを明確にする」といった、どこに労力を集中させるかを示す記述に言い換える。

こうした機会領域が定義されたら、グループはそれらを、2×2の優先順位づけマトリックス(たとえば、ユーザー価値 対 ビジネスへのインパクト)のようなシンプルなフレームワークにマッピングし、最も意味のある機会がどこにあるかを特定する。

アクティビティの終わりには、参加者全員が、アイデア出しの土台となる、優先順位づけされた機会領域のリストを手に入れることができる。これらは、その後のセッションで使う「どうすれば我々は…できるか」(How might we…)の問いや、他の創造的な探索アクティビティのインプットとしてそのまま使える。

「どうすれば我々はできるか」によるアイデア出し

「どうすれば我々はできるか」ワークショップは、調査の知見を創造的な問いかけに変える、構造化されたアイデア出しセッションである。具体的な解決策に早急に飛びつくことなく、ユーザーの問題を解決する方法についてチームが幅広く考えるのに役立つ。

ファシリテーターはまず、調査から得られた知見や課題を確認し、次に参加者とともに、それぞれをオープンエンドの「どうすれば我々は…できるか」の問いに言い換える。たとえば、「ユーザーはオンボーディング中に不安を感じる」という知見は、「どうすれば使い始めるときにユーザーが自信を持てるようにできるか」のように変換できる。

参加者は、これらの問いに対して個人または小グループでブレインストーミングし、できるだけ多くのアイデアを出しあったあと、互いの考えを共有し、発展させる。

この手法は、ユーザーに関する客観的なエビデンスという視点を通して創造性の方向性を定め、チームが真のニーズや機会に根ざした幅広いアイデアを生み出す助けとなる。

デザインスタジオスケッチング

デザインスタジオワークショップでは、構造化され、時間枠が決められたスケッチ作業を複数回行うことにより、参加者が調査に基づく問題定義や機会領域を、初期段階のデザイン方針へと変換するのを支援する。この形式は、創造性、協働、建設的な批評を促す。

ファシリテーターは、焦点を絞ったデザイン課題を提示する(多くの場合、1つ以上の「どうすれば我々はできるか」の問いや機会によって枠組みが与えられる)。参加者は、短く時間枠が決められた各回の中で(たとえば5分を3回)、きわめて低忠実度の解決策を個別にスケッチし、回を重ねるごとに自分のアイデアを発展させていく。その後、参加者は、発表と批評のために決められた進行に沿って、自分のアイデアをグループ内で共有する。

ファシリテーターは、オープンエンドの質問(たとえば、「このアイデアは、価格の透明性に関するユーザーの不満にどのように対処しているか」や「この案は、調査で特定された信頼感と明確さへのニーズにどのようにすればよりよく応えられるか」)を用いて、グループからのフィードバックを元の問題定義にあらためて結びつける。

セッションの終わりには、チームは、さらに発展させることが可能な、根拠があり、ユーザーに関する知見を反映した一連のデザイン方針を得るとともに、次のステップに対する当事者意識を共有することになる。

ゴールとアクティビティの組み合わせ

調査を理解する、共感を築く、知見を行動につなげるという3つのゴールは、それぞれ専用のワークショップを実施する理由になりうるが、必ずしも切り離して扱う必要はない。実際には、ほとんどのチームが、使える時間、対象者、目的に応じて、複数のゴールにまたがってアクティビティを組み合わせている

たとえば、1つのワークショップで、まずギャラリーウォークから始めて、全員が調査内容を理解できるようにし、次に共感エクササイズへ移って、そうした知見に人間味をもたせ、最後に優先順位づけまたはアイデア出しのアクティビティで理解を意思決定につなげる、というように進めるのである。

ゴールとアクティビティの適切な組み合わせとバランスは、チームの現在の状態によって異なる:

  • ワークショップ参加者がその調査やUX思考に不慣れな場合は、共通理解を育むアクティビティから始めて、創造的な問題解決に進もう。
  • グループがすでに調査結果を知っているものの、それが何を意味するのかを十分に自分ごととして理解していない場合は、共感を築くアクティビティを用いて感情的なつながりを築こう。
  • チームの認識が一致し、行動に移る準備ができている場合は、知見をデザイン方針や戦略に変える調査活用型のアクティビティを中心に取り組もう。

要するに、これらのゴールを別々のワークショップとしてではなく、構成要素として扱うことだ。ここに挙げたのはあくまで例にすぎない。実際には、ゴール、組織文化、使える時間に応じて、アクティビティを組み合わせたり再構成したりする方法は無数にある。状況に応じて構成を柔軟に調整し、参加者が認知的、感情的、実践的な面で関与できるセッションを組み立てるファシリテーターこそが最も効果的なファシリテーターであり、その結果として、より深い理解と、よりユーザー中心の意思決定につなげることができるのである。

記事で述べられている意見・見解は執筆者等のものであり、株式会社イードの公式な立場・方針を示すものではありません。