スマートスピーカのUX - 2年半後の利用状況
スマートスピーカのEcho Dotを2019年に、Google Miniを2020年に導入し、デスク脇やベッド脇に設置している。そして、2022年初頭の現在、彼らはそれぞれの役割をもって僕の生活のなかに定着している。
利用実態の定着
このコラムでは、2019年と2020年にスマートスピーカについて書いている。2019年は、筆者がスマートスピーカのEcho Dotを導入した直後のもので、その機能紹介や試用の印象が書かれているが、どちらかというと「こんなもの役にたつの?」というネガティブなニュアンスだった。2020年にはGoogle Miniも追加導入し、Echo Dotは自宅一階のデスク脇、Google Miniは二階のベッド脇に設置したが、この時はそれなりの利便性を実感したことが書いてある。やはり、購入時のUXと10か月後のUXには違いがあったのだ。
そして、2021年を経て、現在は2022年初頭である。彼ら…という擬人法を用いたくなるほどの人格化を行ってしまうようになっているが…は、それぞれの役割をもって僕の生活のなかに定着している。
Echo Dotの現状
実は、一階の部屋に置いているAlexa (Echo Dot)はあまり働かせてはいない。二階のベッド脇に置いているGoogle (Google Mini)と比べて音質が悪いので、音楽聴取には向いていない。それとも関連するが、一階のデスクには5モニターのデスクトップがあり、Alexaは、そこでやっている仕事に関連したこと、つまり単位の変換、和暦と西暦の変換、年齢計算などにしか使っていない。一般の検索や時差計算などについては、パソコンでキーボードをたたいた方がやりやすいし、モニターで確認もできる。音楽だって、これまでに購入したすべてのCDのデータはWAV品質でiTunesをつかってHDDに入れてあり、それを再生した方が音質もいいし迫力もある。未購入の音楽はデスクトップでYouTubeで検索して聞けばいいし映像までついてくる。
それでは何に使っているかというと、デスクの脇においたエアロバイクのお供である。「アレクサ、放送大学」とやる。それでだめなら「アレクサ、ラジコで放送大学」と命令する。そうすると、その時やっている放送大学の内容が流れてくる。それを聞きながらエアロバイクをこぐのである。
もちろんエアロバイクにはハンドルにiPadなんかのタブレット端末を置くための台がついている。最初のうちは、そこにiPadを置いて映像視聴をしていたのだが、画面が小さいため、あまり集中できない。YouTubeを視聴しようとすると、手を使っていちいちタッチ操作をしなければならず面倒くさい。音楽を聴いていても、なんかいまひとつ乗れない。
そんなわけでアレクサで放送大学を聞いている。結構むつかしい話もでてくるので、頭を使う。頭をつかいながら体でバイクを漕ぐってのは案外いい組み合わせである。ともかく音がクリアでないのがアレクサの一番の欠点である。日本語の聞き取りなら何とかなるのだが、音楽には向いていない。そのあたりがアレクサの限界なのか、あるいはたまたまそういう個体にぶちあたってしまったのか、そこは分からないが、ともかくアレクサについてはそんな使い方である。
Google Miniの現状
アレクサとは反対に、大活躍なのがベッドの脇に置いたGoogle Miniである。こいつはアレクサとほぼ同じ値段(Google Miniは半額サービス)で購入したのに、音質がクリアでとても聞きやすい。唯一気に入らない点としては、頭に「OK Google」とつけてコマンドを発声しなければならない点である。それを口にするたびにGoogle様のお世話になっているのだ、ということを実感させられ、ちょっと不愉快な気持ちになる。ここの部分をユーザが特定の言葉に置き換える設定ができるような仕様になっていれば、と思う。「OK おちびさん」とか「OK OK」とかなんでもいい。いちいちGoogleと言わされるのが不愉快なのだ。それ以外、時々音声認識を間違えてトンデモナイ話になることもあるが、まあご愛敬の範囲内ではある。
一日の使い方を書き連ねてみると、まず朝はメディアアラームの機能で6:00から7:00までの間、文化放送が流される。これは以前、アラーム付きラジオでやっていたのと同じことである。ただし、米軍の810KHzだけは設定できない。国内のラジオ局に限定されているようだ。ともかく、これで朝の目覚めを迎える。もっとも目覚めることについて完全に信用しているわけではなく、絶対に早起きをしなければならない時は、あわせて通常の目覚まし時計を併用している。
そもそもベッド脇においてあるので、ベッドでの生活パターンに関連した使い方が多い。昼間でもゴロンとした時には、音楽を聴いたりラジオを聴いたりしている。また、「OK Google、面白い話をして」とか「OK Google、猫の鳴き声は」とか、戯れに遊ぶ使い方をする。猫の鳴き声の場合、我が家の猫がそれに反応してキョロキョロしたりするのが面白い。虎とかライオンの鳴き声には反応しないところを見ると、本能的に猫の声だと察知しているらしい。
寝るときには、「OK Google、ニュース」というと、その日のテレ朝ニュース、J-WAVE、日経AIニュース、スポニチニュース、ウェザーニュースを流してくれる。これはカスタマイズできるそうだが、面倒くさくてデフォルトのまま。寝入る前に聞く分量としてはちょうどいい長さである。
それ以後のルーチンは、音楽を聴きながら寝ること。「OK Google、続けて」だけで、前の晩に聞いていた音楽の続きを流してくれる。いろいろなミュージシャンの曲が流れるが、Alanis Morissette, Kenny Wayne Shepherd, Gerry Rafferty, Third Eye Blind, Blind Melon, Seal, Roxy Musicといった好みの音楽の流れることが多い。僕の好みをどうやって知ったのか気味の悪い面もあるが、ミュージシャンを指定したりする面倒な手間を省ける簡単なコマンドが好きなので、まあ大体はそれで聞き流している。
時に、特定のミュージシャンの曲を聴きたくなったら「OK Google、〇〇をかけて」という。また、流れている曲が気になったら「OK Google、なんていう曲」というと、ミュージシャンと曲名を応えてくれる。そうなると、忘れないうちにとパソコンの前に行き、Amazonで中古CDを購入したりすることも多い。ともかく、コマンドはできるだけ短い方が良い。
次に、「OK Google、2時間たったら止めて」という。さらに「OK Google、音量を3にして」という。この3のレベルは聞こえるか聞こえないかくらいの音量で、なんとなしに心地よい。そして、じきに寝入ってしまうのだ。
これが僕の生活になっているので、旅先や熱海の家に行った時などは、スマートスピーカのないことがちょっと寂しくなる。
長期的UX
人工物の長期的UXは、時の経過につれて変化してくる。そしてユーザの生活パターンにあわせて徐々に一定の位置づけを獲得するようになる。もちろんなかには位置づけを失い、最終的にゴミとして処分されてしまうものもでてくるが、位置づけが明確になると、それは基本的にはユーザの生活を有意義なものにすることを手助けし、生活環境のなかで一定の場所を獲得することになる。
スマートスピーカに関する個人的UXの話は今回で最後にするが、それがもっと高い知能や応答性を獲得するようになった段階で、新たな展開を示すようになるだろう。次にAIスピーカーについて書くのはその時になるだろう。