国際的なユーザビリティテスト:必要な理由

さまざまな国でユーザーテストを実施することで、その文化特有のユーザビリティの問題を特定することができる。正確に、適切なタイミングでテストを行うことは、新しい市場での成功につながるだろう。

異なる文化的背景を持つグローバルなオーディエンスのためにデザインすることは容易ではない。

サイトが国際市場で成功するには、翻訳やローカライゼーションをするだけでなく、その市場のユーザーがあなたのプロダクトとどのようにインタラクトしているかについてのデータを自分たちで直接得る必要がある。ユーザビリティの主要なガイドラインは万国共通だが、海外のオーディエンスとともにテストを行うことで、その文化特有のユーザビリティの問題を明らかにすることができる。海外のユーザーでテストする理由は主に2つある:

  1. 海外ユーザーは、自国のオーディエンスとは異なるやり方であなたのプロダクトとインタラクトしたり、特定の機能を多用したりしている可能性がある。
  2. メンタルモデルやユーザーがテクノロジーや組織とインタラクトする方法は、国によって異なる可能性がある。

海外ユーザーがよく使う機能に関するユーザビリティの問題

国際的なユーザビリティテストは、主要なユーザーグループがほとんど使わないサイトの重要な機能の問題を発見することができる。

たとえば、国内のユーザーがサイトの言語を切り替えることはほとんどないだろう。しかし、海外ユーザーにとって、この機能の見つけやすさは非常に重要だ。中国でのユーザー調査中、ある女性参加者が韓国の衣料品販売会社Maybe-Babyのモバイル版で買い物をしようとした。彼女はすぐにページが英語と韓国語で書かれていることに気づいたが、彼女はそのどちらも理解できないので、中国語版はないのだろうかと思った。そこで、ナビゲーションメニューをタップしたが、残念ながらそこには言語切り替えボタンはなかった。彼女が言語切り替えボタンを発見するまでにはかなり時間がかかった。ボタンはページフッターにあったからだ。彼女はトップページをスクロールし続け、13画面分ほどスクロールしたところで、ページの下のほうに国旗が並んでいるのをようやく目にした。中国の国旗をクリックすると、サイトの中国語版が表示された。彼女は言った。「さまざまな言語を国旗で表示するのは良いデザインだと思います。というのも、私は「言語」を英語や韓国語でどう言うのかを知らないと思うからです。でも、それをどうしてこんなに長いページの最後に置いたのでしょうか。見落とす可能性もあったと思います」。

モバイル版のmaybe-baby.co.kr(左)は、長さが13画面分あり、言語切り替えボタンはフッターに表示されていた(スクリーンショットの右に拡大表示した)。

洋服のサイズも、最適な計量単位と同じく、国によって異なる。海外サイトで買い物するユーザーは、国内ユーザーよりもサイズの区分を理解したり、サイズガイドなどのツールを利用する必要性を感じるだろう。ところが、ある調査参加者は、Zara.cnでジーンズを買おうとしたが、サイズガイドにきちんとアクセスすることができなかった。彼女が「サイズガイド」ボタンをクリックすると、ジーンズを履いた女性の大きな画像のオーバーレイが表示された。ユーザーがさらにサイズを選択すると、その画像の上に選んだサイズの寸法が表示されることになっていた。しかし、残念ながら、彼女にはそれがわからなかった。「サイズを選択してください」というラベルとそれに関連付けられている小さな矢印がページの一番下ぎりぎりのところに表示されていたからだ。「ガイドはどこですか。写真しかないのですが」と彼女は困惑していた。

Zara.cn:参加者が「サイズガイド」をクリックすると、ジーンズのモデル着用画像が表示された(左)。画像の下の「サイズを選択してください」(訳注:Choose a Sizeのところ)を使ってサイズを選べば、そのサイズに該当する寸法が画像上に重なって表示されることになっていた(右)。しかし、このドロップダウンが画面の一番下に寄りすぎていたこと、それに関連付けられている矢印が小さすぎたことから、彼女はこの機能をまったく発見できなかった。彼女はこのサイトには問題があると思った。

こうした基本的なユーザビリティの問題を明らかにすることは、海外のオーディエンスのためになるだけでなく、異なる言語を話すマイノリティのような、ユーザビリティテストで通常はリクルートされることのない国内の潜在ユーザーにもメリットがある。その結果、実際にデザインのアクセシビリティも向上する。

その文化特有の問題

ユーザビリティテストを実施すると、ユーザビリティの一般的な不具合以外にも、以下のようなその文化特有の問題を国際的なユーザビリティテストの場で特定することができる:

  • 利用状況
  • プロダクトに対する認識
  • コンテンツの消費
  • 組織とのコミュニケーション

利用状況

ユーザーは通常、あなたのプロダクトをどこで利用し、誰と一緒にいるのか。どのようなデバイスの制約があるのか。従来のラボ内でのユーザビリティテストではなく、調査参加者が自分の希望する場所(自宅やオフィスなど)でタスクを実行する国際的なユーザビリティテストをリモートで実施すれば、これらの質問について詳しく知ることができる。

あなたのプロダクトやサービスとユーザーがインタラクトする方法に影響を与える可能性のあるすべての(物理的およびデジタルの)成果物と人物のことを、状況的要因という。

すべての状況的要因がユーザーエクスペリエンスにどのような影響を与えるのかを把握することは不可能だし、その必要もないが、ブロードバンドの制限などの問題を特定できることはある。

たとえば、最近インドの参加者によるリモートユーザビリティテストを実施したところ、Webサイトを読み込むのに長時間待たなければならなかったユーザーが何人もいた。Webサイトが凝った作りで、アニメーションや写真、動画を多用していると、状況はさらに悪化した。

ある参加者は、スマートフォンでDecathlonのサイトにアクセスしたとき、ナビゲーションが読み込まれるのを20秒も待った(そして、結局読み込めなかった)。このナビゲーションは非常に複雑で、たくさんの写真が入っていて、検索機能まで埋め込まれていた。彼はナビゲーションが完全に読み込まれるまで待たずに、最終的にはサイトの検索バーを使った。「このWebサイトは読み込むのにかなり時間がかかりますね」と彼はコメントした。

対照的に、彼がPaytmmall.com(インドのECプラットフォーム)で買い物をしようとすると、ミニマルなデザインのナビゲーションがすぐに読み込まれた。そのため、彼はこのナビゲーションを使って快適にサイト内を移動することができた。

Decathlon.in(左)は複雑なナビゲーションを採用している。各メインモジュールには、インタラクティブなサブモジュールが複数あり、検索機能も備えられている。このナビゲーションの読み込みはあまりにも時間がかかったので、参加者は使うことをあきらめてしまった。一方、paytmmall.comのナビゲーション(右)は軽くてすっきりしているので、はるかに短い時間で読み込まれ、参加者はすぐに買い物を始めることができた。

あなたのプロダクトと、オペレーティングシステムやブラウザなどのユーザーが選ぶデバイスやソフトウェアとの互換性も極めて重要だ。ユーザーはこうした基本ツールには慣れてしまっているし、国内のWebサイトの閲覧には問題がないので、あなたのプロダクトがうまく機能しない場合、自分側の問題ではなく、プロダクト側に問題があると考えるからだ。

こうした事例は、中国人を対象にeコマースの調査を行った際、いくつも目にした。たとえば、友人の誕生日に口紅を選ぼうとしていた女性参加者は、中国のMAC Cosmeticsのモバイル版にアクセスして、口紅を選ぶことまでは問題なくできたのだが、どういうわけか決済することができなかった。カートのボタンがどうにも機能しなかったからだ。彼女はこのサイトに失望し、サイトに何か問題があると考えた。

実際には、彼女はBaiduブラウザをデフォルトのブラウザとして設定していて、このブラウザとMACのサイトの間に互換性の問題があった。Baidu Statisticsによると、中国のモバイルトラフィックの9.5%がBaiduブラウザを経由している。MAC Cosmetics Chinaは、気づかないうちに、このセグメントの顧客を失う可能性があるということだ。リサーチャーがその代わりにスマートフォンにもともと入っているブラウザで試してみるように彼女に促すと、MACのサイトはきちんと動作した。

(ただし、ユーザビリティテストのみによって、互換性の問題を見つけるべきではない。そのユーザーセグメントが小さい場合、テスト中に問題を特定するのは難しいこともあるからだ。グローバルなプロダクトに取り組んでいるチームは、デザインおよび開発の初期段階で、プラットフォームの使用状況データを確認することで、このような互換性の問題を考慮する必要がある)

さらに、ユーザビリティテストをすることで、あなたのプロダクトをユーザーが使用する際の対人関係やコミュニケーションが彼らのエクスペリエンスにどのような影響を与えているかも明らかになることがある。

たとえば、テスト中、インド人の年配の参加者は、Webサイトで何かが見つけられないと、自分の娘によく助けを求めていた。彼女は英語が得意ではなく、テクノロジーにもあまり詳しくなかったからだ。

(一般的には、参加者がタスクを実施しているときに、他の人が彼らに干渉することは認められない。しかし、このような場合は例外だ。というのも、この事例はユーザーが実際にデジタル技術をどのように使っているかを反映しているからだ。また、小さな子どもが技術的な問題を抱えているときに親が手助けをするようなケースもまた例外である)

プロダクトに対する認識

海外のユーザーは、あなたのプロダクトのビジュアルデザインをどのように認識しているだろうか。タスクを実行する前後に、あなたのプロダクトやサービスについてどのように感じているのだろうか。あなた方のブランドをどのくらい信頼しているか。

文化的背景が違えば、ビジュアルデザインの好みも異なってくる。リサーチャーのKatharina ReineckeとKrzysztof Gajosは、世界中の39,000人以上の参加者からWebサイトの美しさに関する主観的評価を240万件収集した。その結果、ロシアの参加者は視覚的にあまり複雑でないWebサイトを有意に好むのに対し、メキシコとチリのユーザーは視覚的に複雑なサイトに高い評価を与えることがわかった。さらに、同じ調査から、フィンランド人、ロシア人、フランス人、ドイツ人がモノクロ(単色)のデザインを好む一方、マレーシア人とチリ人はカラフルなビジュアルを好む傾向があることもわかっている。同様に、以前、我々が中国で行った調査では、非中国人ユーザーよりも中国人の参加者は視覚的に複雑なWebサイトに対して寛容であることも明らかになっている。

ターゲットとするオーディエンスによってビジュアルデザインをテストするのは、そのデザインに対する彼らの関心度を測定する良い方法だ。

美しさについての即時的な評価だけでなく、ユーザビリティテストを実施すれば、ユーザー、特に新規ユーザーが、あなたのプロダクトやサービスの信頼性と信用性をどのように認識するかを明らかにすることができる。たとえば、ターゲットとするオーディエンスによって、信頼できると感じるデザインコンポーネントはさまざまだ。

オーストラリアのドラッグストアサイトであるPharmacy Onlineの中国語版を中国人参加者にテストしてもらったところ、このサイトは信頼できると賞賛したユーザーが何人もいた。このサイトのナビゲーションのUIが中国のECサイトとのものと同様のものになっていること、また、WeChat公式アカウントなどの中国に対応したコンポーネントが入っていることを彼らは評価したのである。これらの要素のおかげで、このWebサイトは彼らにとって見たことがあるように感じられるサイトになっていたからだ。

pharmacyonline.com.auの中国語版(上)と、Taobao(:中国のアリババグループが設立したオンラインモール)のトップページ(下)との比較:参加者の中にはPharmacy Online中国語版のローカライズされたデザインを非常に信頼できると感じる人もいた。なぜならば、WeChatのQRコードやTaobaoのような情報アーキテクチャなど、彼らにとっておなじみのコンポーネントが採用されていたからだ。

コンテンツの消費

サイトに表示されている情報を海外ユーザーがすぐに理解できるか。サイトの口調は彼らにとって好ましいものになっているか。彼らはコンテンツを有益であると感じているか。そして、それをどのように活用するのか。

また、文化的に異なるオーディエンスがサイトで同じ言語版を利用する場合は(たとえば、米国、オーストラリア、英国で、同一の英語版を利用するなど)、グローバルなオーディエンスにコンテンツをテストしてもらうことがとりわけ重要である。

たとえば、ConverseのWebサイトの中国語版をテストしたとき、ある若い男性参加者がラベルを批判した。「Men」、「Women」、「Accessories」といったECサイトで従来から使われているラベルの代わりに、Converse Chinaは、「男的」、「女的」というラベルを採用していたからだ。(この2つの中国語に相当する英語を見つけるのは難しい。dude(:イケてる奴)やdudette(:イケてる女の子)があたるのかもしれないが、これらの中国語はdudeやdudetteのようなカジュアルな口調というよりは、ネガティブな意味合いで使われることが多い)。

この参加者は、ファッショナブルな靴をよく購入する、Converseのターゲット層に属す人だったが、「『Men』と『Women』ではなく、『男的』、『女的』と書かれていますね。これは違和感があります。少しカジュアルすぎるし、ユーザーを尊重していない感じがします」と述べていた。

異なる言語を話すユーザーのためにコンテンツを翻訳したら、必ず口調を確認しよう。ブランド戦略に影響を及ぼす可能性があるからだ。マーケティングの専門家の意見を聞くだけでなく、複数のユーザーにそのデザインを使ってタスクを実行してもらい、口調をどう感じるかを確認したほうがよい。

コンテンツ自体と口調以外にも、文化的背景が違えば、コンテンツの構成の仕方の好みも異なってくる。たとえば、中国のようなハイコンテキストな文化圏のユーザーは、情報密度の高いWebサイトに慣れているので、そうしたサイトを情報密度の比較的低いWebサイトよりも好む可能性はある。

提供しているコンテンツが有益かどうかや、こうしたターゲット層が類似サイトで慣れているような特定のコンテンツをさらに提供する必要があるかどうかを確認することもできる。

たとえば、あるインド人参加者は、Myntraで販売されているフォトフレームで提供されていた寸法の情報(単位はセンチメートル)に不満を感じていた。「これはおかしいです。私たちは壁用の装飾品を測るとき、センチではなく、インチを使うからです。なので、提供されているサイズの情報は使えませんでした」。(インドでは、インチを好む文化もあれば、センチメートルを好む文化もある)

Myntra(インドのECプラットフォーム)が提供する商品サイズ(「Model Size」)は、インチではなくセンチメートルで表示されていて、この参加者にはまったく役立たなかった。

中国で実施したeコマースについての調査で、ナイキの靴を購入しようとしていた参加者は、人気度フィルター機能を要望していた。このツールは中国国内の小売サイトのほぼすべてで提供されている。「人気度フィルターがないじゃないですか! どれが一番売れているのかを知りたいのに。それがわかれば、最も人気のあるモデルを履くことができます」と彼は不満を漏らしていた。

組織とのコミュニケーション

海外ユーザーは、通常、あなた方の組織や他の似た組織とどのようにやり取りしているか。他のチャネルよりも頻繁に利用される傾向があるチャネルはあるか。

たとえば、インドの参加者はワンタイムパスワードを好むが、中国の参加者はモバイルではWeChatやAliPayなどのサードパーティのサービスを介してログインするし、デスクトップではQRコードを読み取ってログインをする。

中国で大学のWebサイトに関する対面調査を実施した際、ある参加者がヨーク大学の編入要件を把握しようとしていた。彼女はWebサイトにあったあいまいな情報に満足できなかったのだが、大学とEメールで連絡を取る必要があることを知って憤慨した。「Eメールは中国人の学生と連絡を取る手段としては適切でないと思います。Skype経由でのオンラインのオープンデーのようなリアルタイムでコミュケーションが取れる方法にしてほしいです」。

また、文化が違うと、自分の好きなブランドの最新情報を得るためのプラットフォームの好みも異なる可能性がある。「お気に入りのブランドが何か新商品を発売していないかチェックしてみてください」といった、オープンエンドで探索的なユーザビリティテストのタスクによって、彼らの好みや閲覧パターンを明らかにできるだろう。

たとえば、米国で実施したソーシャルメディアについてのユーザビリティテストでは、このような質問と認知マップ作成というアクティビティを組み合わせた。そこから、参加者が、組織はFacebookよりもTwitterで活動していると思っていることがわかった。何人かの参加者はInstagramでファッション関連企業をフォローしていた。企業とのコミュニケーションにSnapchatを使っている参加者は1人もいなかった。一方、中国では、WeChatとWeibo(Twitterに相当)が、企業とのコミュニケーションに最も利用されているソーシャルメディアチャンネルである。

国際的なユーザビリティテストを実施するタイミング

新しい市場での戦略を立てたり、プロダクトの発売を予定している場合は、プロダクト開発の初期段階でグローバルなオーディエンスを対象にしたユーザビリティテストを実施する必要があるペーパープロトタイプでも、その文化特有の問題と一般的なユーザビリティの問題の両方について、豊富な知見を得ることができる。

1回のテストですべての問題を特定する必要はない。場合によっては、小規模のテストを、焦点を変えて何度か実施するほうが、コストがかからず、実施も容易だ。たとえば、1回目のテストでは、利用状況を観察しながら、基本的なユーザビリティの問題やコンテンツ、口調をテストする。次に、2回目のテストでは、ローカライズした機能とコンポーネントのテストとその優先順位づけに重点的に取り組む。

プロダクトの発売後は、すべての市場で利用されているグローバルなコンポーネントのユーザビリティを調べるためにテストを行い、また、新しい市場で競争力を維持するために他にはどんな機能をローカライズすべきかをさらに詳しく調査すればよい

新しい市場であなたのプロダクトが知られるようになってしばらくしたら、 ベンチマークによく使われる定量的なユーザビリティテストを実施するのも有益だ。選択した成功指標を追跡し、大きな変化がないかを観察することで、デザイン作業を評価し、自分たちのデザインのパフォーマンスと業界標準を比較しよう。

ユーザーのニーズやメンタルモデル、期待を十分に理解するには、あなたのプロダクトのユーザビリティテストと、ユーザビリティの競合テストインタビューフィールド調査日記調査などの定性的調査手法を組み合わせればよい(そして、そうすべきだ)。

結論

グローバルなオーディエンスによる調査を行うことで、国内ユーザーによるテストだけでは見つけられない問題を発見できるようになる。こうした調査を早い段階から頻繁に実施し、国際市場での成功を確実なものにしてほしい。

参考文献

Reinecke, K., & Gajos, K. Z. (2014, April). Quantifying visual preferences around the world. In Proceedings of the SIGCHI conference on human factors in computing systems (pp. 11-20).