ユーザーテストをもっと手軽に:
樽本徹也 著『アジャイル・ユーザビリティ』書評
タイトルにも含まれている、「アジャイル」とは何でしょうか。アジャイル(agile)とは、英語で「俊敏な」「すばやい」を意味する言葉で、迅速で柔軟な対応ができる、軽量なソフトウェア開発手法群の総称です。近年、ソフトウェアの開発現場に、この考え方が取り入れられるようになってきました。
2012年2月、オーム社より『アジャイル・ユーザビリティ -ユーザエクスペリエンスのためのDIYテスティング-』(Amazon.co.jp)という本が出版されました。本書には、モノやサービスの利用品質を向上させるための手法としてのユーザーテストの実践ノウハウが詰まっています。
最初の第1章では、ユーザーエクスペリエンスとユーザー中心設計について概説されています。最後の第6章では、ユーザーエクスペリエンスとアジャイルの融合について解説されています。
本書の中心は、第2章から第5章で展開される、ユーザーテストの実践に役立つ、そのノウハウの詳細な解説です。第2章ではユーザーテストの概要と方法論について、第3章では、調査に協力してもらうテストユーザーの募集(リクルート)方法と、テストの設計方法について、第4章ではテストセッションの運営方法について、そして第5章ではテスト結果の分析方法について詳細に説明されています。
ウォーターフォールからアジャイルへ
そもそも、タイトルにも含まれている、「アジャイル」とは何でしょうか。アジャイル(agile)とは、英語で「俊敏な」「すばやい」を意味する言葉で、迅速で柔軟な対応ができる、軽量なソフトウェア開発手法群の総称です。近年、ソフトウェアの開発現場に、この考え方が取り入れられるようになってきました。
従来からのウォーターフォール型の開発モデルでは、設計、実装、テストなどという工程が詳細に計画され、後工程は、前工程での成果物に基づいて進めるようになっています。これには、前工程への手戻りが発生しないというメリットがあります。
現在流行している、ウェブアプリケーションやモバイルアプリの開発では、変化にすばやく適応することが特に求められますが、ウォーターフォール型の開発モデルでは開発途中の変化に臨機応変に対応することは容易にできることではありません。その点、アジャイルな開発手法であれば、変化に柔軟に対応することができるのです。
ユーザビリティからユーザーエクスペリエンスへ
従来のユーザビリティエンジニアリング(ユーザビリティを向上させる活動)も、このウォーターフォールモデルを前提にされていました。それを外部に委託することは、限られた開発の期間と予算の中で、時間も費用もさらにかかってしまいます。そのことが、開発現場がユーザビリティエンジニアリングを敬遠する原因になっていました。
最近は、モノやサービスの利用品質を決める軸が、従来の、ただユーザーが苦労せずに使えるかどうかを問う「ユーザビリティ」から、使っていて楽しいなどというような知覚や反応まで含んだ「ユーザーエクスペリエンス」という包括的な概念へと、次第に変わりつつあます。本著ではユーザビリティだけにとどまらず、ユーザーエクスペリエンスという視点から、ユーザーに「いいね!」と感じてもらえるモノやサービスを創りだすための方法としてのユーザーテストが解説されています。
前著
この本の著者の樽本さんは、ユーザー中心設計関連の実務を多数手がけられている、日本屈指のユーザビリティエンジニアです。以前はイードに在籍されており、そのころからユーザー調査やユーザビリティ評価などの実務で活躍されておりましたが、現在は独立し、ユーザビリティエンジニアとしての他にもユーザー中心設計のコンサルティングやアジャイルユーザーエクスペリエンスコーチとしても活躍されています。
なお、樽本さんは本書の前に、『ユーザビリティエンジニアリング -ユーザ調査とユーザビリティ評価実践テクニック-』という本を出版されています。この中では、ユーザーテストのノウハウだけでなく、そもそも“ユーザビリティとは何か”や、ユーザー調査の目的と方法、ヒューリスティック評価の方法と基準などについても多くのページを割いて解説されています。『アジャイル・ユーザビリティ』ではユーザーテストの実践ノウハウの解説にフォーカスしてあるため、ユーザビリティの概要を知りたいという場合には、こちらもあわせてお読みになることをおすすめします。
外部の専門の会社はもはや不要?
本書の「はしがき」では、開発の現場にユーザーテストが普及していないのは、専門家に頼むと、高い(費用がかかる)・遅い(結果が返ってくるのに時間がかかる)・重い(結果の分量が多い)からだとされています。上で述べたように、確かに、外部の専門の会社にユーザーテストを依頼すると、時間も費用もかかってしまうのは事実です。
しかし、本書を読んだだけで、うまくユーザーテストが実施でき、ユーザビリティの高いモノやサービスが開発できるようになるのかなと不安な方もいらっしゃると思います。そんな方は、イードのような外部の専門の会社に依頼してみてはいかがでしょうか。イードでは、ユーザーテストだけでなく、専門家評価やユーザー調査なども依頼に応じて実施しております。また、ユーザビリティエンジニアリングが組織に根づくよう、座学や演習による教育メニューも提供しておりますので、将来的には、外部の会社に頼らなくても、本書さえあれば、DIYでユーザビリティエンジニアリングができるようになります。
プレゼントのお知らせ
TwitterでU-Site(@UsabilityJp) をフォローして、”#アジャイルユーザビリティが読みたい”というハッシュタグつきでつぶやいてくれた方の中から、抽選で3名様に「アジャイル・ユーザビリティ」をプレゼント!
応募の締め切りは2012年4月16日 正午(日本時間)のつぶやきまで。どしどしご応募ください!!
ご注意: 「アジャイル」と「ユーザビリティ」の間に「・」(中黒/中点)は入れないようにお願いいたします(ハッシュタグが切れてしまいます)。
ありがとうございます。本プレゼントは、終了いたしました。