サブスクという支払い方
ユーザとしては、サブスク制サービスを利用しないままにせず、能動的に利用すべきだ。サブスク課金をしている企業は、その都度ユーザにリマインドし、止めたいユーザが簡単に停止できるようにすべきだろう。
サブスクとは
サブスクリプション(subscription)という英語は、もともとは予約購読とか予約代金、会費、寄付金などという意味だったが、現在ではサブスクと略称されている。一定期間、毎月あるいは毎年、定期的に料金を支払って、製品やサービスを利用したりすることである。解約しないかぎりは自動更新され、課金されつづける。
その意味でローンと似た点はあるが、一定期間の支払いを終えた後、ローンでは製品などは自分のものとなるが、サブスクでは製品の利用が終了したり、返却したりすることになる点が異なっている。たとえば、自動車を36回払いのローンで購入した場合、支払が終わったあと、その車は自分のものになるが、トヨタのKINTOなどのサブスクを利用した場合、5年などの契約期間が終了した時には、車はトヨタに返却することになる。
つまり、サブスクというのは、あくまでも利用権を入手するだけであり、所有権を手に入れることとは異なる。その意味では特にサブスクと呼んだ場合には、「定額制」とか「継続課金」と訳すのが適切といえるだろう。
さまざまなサブスク
サブスクは、典型的には、テレビショッピングやネットショッピングで健康食品や飲料水、ワインなどが定期的(多くは月に一度)に配達され、消費者はその月額代金を支払う仕組みである。また生命保険や火災保険、あるいは新聞購読料やケーブルテレビの接続料金、クレジットカードの年会費(無料の場合もあるが)なども月額課金によるサブスクといえる。これらは不要になった場合には解約することができるが、ワインなどの一部商材では12回、つまり満期が一年に設定されているものが多い。
また、近年はスマホやパソコンのサービスやアプリについて、サブスク方式になっているものが多い。Apple MusicやYouTube Musicのような音楽配信、HuluやU-NEXTなどの映像配信、Amazon Primeのような商品の配送特典やビデオ、音楽、書籍、ゲームなどを含んだ総合的なサービス、Microsoft 365やChatGPT Plusのようなソフトウェアなどがある。
また定額制のものが多いなか、従量制のものもある。インターネット接続や携帯電話の月額料金、電気・水道・ガスなどの公共料金はその典型といえる。これらはインフラを利用することによって発生する料金なので、契約を能動的に解除することは引っ越しや死亡などの特殊な場合に限られる。
ほかにも、サブスクというくくりがされていなくても、NHKの放送受信料や税金、健康保険、年金などは、たとえばNHKを利用する(という前提で課金されていたり)とか、公共の道路(有料道路を除く)や建造物を利用する(権利を有する)ということが可能となり、毎月または毎年、定額制もしくは従量制で課金されてくるので、サブスクに類似しているといえるだろう。これらについての解除は、死亡や外国への国籍の移動など、日本で生活することをやめれば課金されなくなるが、基本的には一生涯ついて回るものといえる。
サブスクの利便性と問題点
前述のようにリストアップしてみると、我々の生活の隅々にまでサブスクは入り込んでいることがわかる。サブスクは、ユーザ側から見ると、たいていが銀行口座やクレジットカードからの自動引き落としになりうるし、利用の都度、支払をしなければならないという面倒な手間なしに商品やサービスを受け取ることができる利便性があり、企業側から見ると、安定的な収入が(一定期間)見込めるというメリットがある。
しかし、こうしたサブスクには特にユーザ側にとっては困った点もある。まず多くのサブスクにおいて、解約してしまうとその製品やサービスが利用できなくなってしまうという点である。だから利用している間はサブスクを継続することになる。ただし、一部のソフトウェアでは、解約しても最新版へのアップグレードができなくなるだけで、旧版は利用できるものもあるし、読書のサービスではダウンロードしたデータは、そのまま(資産であるかのように)読むことができるものもある。
このサブスクというシステムをHCDないしUCD的な観点から考えると、解約すると利用できなくなるという不便さがあるためにユーザは(面倒な手間を省くため)課金を継続する傾向になるわけで、結果的に企業にとっては安定した収益が得られる仕組みではあるが、ユーザにとっては定常的にフル活用しない限り安定したメリットを享受できているとは言えないのではないか、とも考えられる。
次に、まったく利用しない時にも、月額料金が発生してしまうという点である。たとえばネットの新聞購読やアプリの利用などは、最初は便利だと思って利用していても、だんだんと利用しなくなり、契約したことすら忘れてしまうことがある。初月無料とか、3か月間は無料といった甘い言葉でユーザを釣る企業もあるが、有料期間に入る前に、やはり不要だから解約してしまおうとなることはあまり多くはないだろう。このあたりも、UCD的には、人間心理の機微をついた戦略といえるが、真にユーザのためになっているかと考えると疑わしくなってしまう点である。
3番目は、解約しようと思っても、解約手続きが煩雑だったり、分かりにくかったりしてユーザが困惑してしまうことがある点である。なかには、解約には郵送での手続きが必要なオンラインサービスもある。郵送というのは、効率性の点で現在では劣った手法であり、あえてそれを採用しているのは、企業側の戦略と考えるべきだろう。
4番目は、契約していることを「忘れてしまう」点である。これはユーザ責任といえばそうではあるのだが、契約数が増えると、特に口座やカードの自動引落しの場合には、契約していることが意識から遠のき、製品やサービスを利用していないにもかかわらず、利用料金を取られつづけてしまうことが結構ある。
この点では、更新期間が設定してあり、期限が近づくとリマインドをしてくれる企業や組織もあり、良心的だなと思わされる。たとえば学会のACMなどは、かならずリマインドメールを送ってくれるため、「意識して」継続利用を申し込むことができる。また、動画編集ソフトのFilmoraやUniConverterを提供しているWondershareでは、更新時期のたびにリマインドメールを送ってくれる。このような良心的な企業もあるのだが、その他大勢の企業ではリマインドはしてくれていない。だから契約したことを忘れてしまったら最後、毎月数百円あるいはそれ以上の金額が自動的に引き落とされてしまうことになる。
留意すべきこと
仮に、毎月300円の課金だったとしても、利用しないまま忘れてしまっていたのでは、1年で3,600円、3年で10,800円を無駄に支払ってしまうことになる。そうした「幽霊」課金を何種類も取られてしまっていたとすると、合計すると相当な金額になる。これはサブスクの罠というべき問題であり、ユーザとしてはもっと課金に対する意識を高めておかねばならないだろう。
そのための自衛策として考えられるのはただ一つ。銀行の引き落とし明細やクレジットカードの支払い明細をしっかりチェックすることだ。明細書に書かれている項目は簡潔すぎて、何の費用でどこに支払っているのか、分からなくなってしまっているものもあるだろう。そうした場合、項目でネット検索をすれば、たいていその企業のサイトにたどりつけ、そこから解約のメニュー項目を探せば解約することができる。この原稿を書くにあたって、筆者が明細を確認したところ、何のことかわからなかったり、今では使っていなかったりするサービスが7つも見つかり、いずれもすべて解約の手続きをとった。
サブスクは便利なサービスではあるが、こうした影の側面もあるので、ユーザとしては意識を高くもって、利用しているかどうかをチェックし、受け身的にではなく、能動的にそのサービスを利用するようにすべきだろう。
反対に、システム構築者の側に立って考えると、サブスクというのはユーザの心理の影をうまくついた効果的な手法だということになるが、ちょっと大げさかもしれないが、倫理的に適切といえるのかどうか疑問に思うところもある。少なくともサブスク課金をしている企業は、課金する都度、つまり毎月とか毎年、ユーザに対してメールなどでリマインドを行い、止めたいと思ったユーザが簡単な手続きで課金を停止できるような仕組みにしておくべきだと思われる。そして、ユーザが忘れてしまうという現象を悪用するようなことをせず、堂々と商売をするべきではないだろうか。