『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』のご紹介&プレゼント

よりよいUXを実現させる人間中心設計。その実践的な流れが1冊でわかる『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』の内容をご紹介します。また、その出版を記念して、このサイトの読者の方へ本書を抽選でプレゼントいたします(4月16日:募集を締め切りました)。

ユーザビリティエンジニアリング 第2版 書影

2月末に、『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』が刊行されました。これは、8年間増刷されたというロングセラーである、初版『ユーザビリティエンジニアリング』の改訂版で、2012年2月刊行の『アジャイル・ユーザビリティ』の姉妹書にあたります。

この本の著者である樽本さんは、日本におけるユーザビリティ関連実務の第一人者です。以前はイードに在籍していらっしゃいましたが、現在は独立し、「利用品質ラボ」という名称で活動されています(ブログ:人机交互論)。

目次

  1. 本書の概要
  2. 初版との違い
  3. HCD事業部・新人Kの初読の感想
  4. 書誌情報
  5. 読者プレゼント

1. 本書の概要

この本のタイトルは『ユーザビリティ評価の方法』ではありません。事前に十分なユーザー調査・分析をせずに作った製品やサービスをユーザーがうまく使ってくれるかどうか、それをリリース直前に評価するだけでユーザビリティが向上するわけではありません。使ってもらいたいユーザーはどんな人で、どんな生活を営んでいるのか、それを理解することも含めてユーザビリティ活動なのだ、ということが、この『ユーザビリティエンジニアリング』というタイトルに表現されているのだと思います。

本の中では、ユーザビリティの向上を核とした人間中心設計(HCD;本書の中では「ユーザー中心設計」)の、調査・分析・設計・評価というプロセスの順序に沿って説明されています。そのプロセスを知らない方でも、通読するとその流れを理解することができるようになっています。

この本について、Amazon.co.jpの紹介文には、

全編にわたって、著者の豊富な実務経験に基づいた実践的ノウハウが満載です。開発の現場でUX/ユーザビリティの向上に取り組んでいる起業家、プロダクトマネージャ、エンジニア、デザイナ等にお薦めします。

とあります。まさにそのとおりで、樽本さんのこれまでの経験から培われた実践的なノウハウや注意すべき点などが惜しげもなく公開されています。製品やサービスの開発に携わっている方におすすめの本です。

なお、人間中心設計の概念・規格・マネジメント手法などを、基礎から体系的に学びたい方には、黒須先生が書かれた『HCDライブラリー 第1巻 人間中心設計の基礎』がおすすめです。

2. 初版との違い

本書は増補改訂版で、ボリュームも197ページから256ページに増えています。初版をお読みになった方にも新たな発見があることと思います。

全体の変化

初版から第2版への変化は、サブタイトルにあらわれています。
初版では「ユーザ調査とユーザビリティ評価実践テクニック」でしたが、
第2版では「ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法」となっています。
それが示すように、「ユーザーエクスペリエンス」と「設計」という、第1版にはなかった部分が足されました。

初版も、HCDのプロセスに沿って説明されていましたが、ユーザビリティテストの分析で終わっていました。第2版では、ユーザビリティテストの分析のあとに再設計するという流れになっており、よりHCDのサイクルに沿ったものとなっています。

時代背景として、HCDの規格の変化があるでしょう。初版が刊行された2005年の時点ではISO 13407(JIS Z 8530)という、ユーザビリティを向上させるプロセスを規定したものでした。現在は改訂され、ISO 9241-210という、ユーザーエクスペリエンスの改善をHCDを適用させる根拠としたものに改訂されています(こちらはまだJIS規格化されていません)。

ユーザー調査・分析

「データ分析法」というチャプターで、インタビューや観察結果という質的データの分析方法としてKJ法が紹介されるようになりました。KJ法は、質的データ分析の標準的な方法ですが、「ボトムアップで分析する」「単語に惑わされない」「全部分析する」など、普段からKJ法での分析をしていらっしゃる著者ならではの実務的な注意点が記されています。

また、第1版では2ページ程度のコラムという扱いだった「ペルソナ」についてが、このチャプターの中で5ページを割いて紹介されています。ペルソナとは、製品やサービスを設計する際に参照する、明確に定義された仮のユーザー像のことです。通常、設計チームのメンバーでワークショップを開催し、みんなで手を動かしながらユーザーを分析し、ペルソナ文書としてまとめることになります。そうすることで、ターゲットユーザーの現状を理解し、メンバー内でユーザー像がブレないようにすることができます。

なお、ユーザー調査・分析、特にペルソナ/シナリオ法については、棚橋弘季さんの『ペルソナ作って、それからどうするの?-ユーザー中心デザインで作るWebサイト』という本で詳しく解説されています。こちらの併読されることをおすすめします(2014年4月現在、残念ながら、新品は入手できないようです)。

設計

Part 2「設計」の中で、プロトタイプの役割や作り方だけではなく、「発想法」というチャプターが追加されました。

第1版では2ページ弱のコラムという扱いだったブレインストーミングが、第2版のこのチャプターの中で10ページを割いて紹介されています。また、製品・サービスの設計方法だけでなく、リーンキャンバスなどのようなビジネスモデルの検討手法も紹介されています。これは、ユーザーのニーズを把握して、それに必要なものにフォーカスしてビジネスを立ち上げるという、デザイン思考やリーンスタートアップの考え方を取り入れたものと言えるでしょう。

ユーザーシナリオについては、初版でも、ユーザー理解のためのAs-Is(現状)のシナリオについては解説されていましたが、第2版では、どうしたらユーザーに喜ばれるのか、という、To-Be(理想)のシナリオについても掲載されました。これにより、ユーザーの現状把握と、製品・サービスのプロトタイプ制作の間がスムーズにつながりました。

「認知的ウォークスルー」の追加

認知的ウォークスルーとは、ユーザーの思考過程をシミュレートしながらユーザビリティ上の問題点を発見する方法です(ウォークスルー=立ち稽古)。ユーザーが使いながら操作方法を習得する4つのステップ(目標設定・探査・選択・評価)を意識しながら分析を進めます。「目標設定」「探査」「選択」「評価」というと難しく聞こえますが、それが4つの平易な質問形式で解説されていることで理解しやすくなっています。

ユーザビリティ評価を業務として行なっている私自身、一度でも順を追って操作していれば気づくようなユーザビリティ上の問題点が放置されたままリリースされている製品やサービスは少なくないように感じます。認知的ウォークスルーについて解説されたことで、「一度でいいからウォークスルーをやってみて」と、UI設計者(デザイナー)に呼びかけているように感じました。

3. HCD事業部・新メンバーの初読の感想

この4月からイードのHCD事業部に配属となった新メンバーから、本書の初読の感想が届きましたのでご紹介します。

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とてもわかりやすいです。
ユーザビリティ、ユーザーエクスペリエンス、ユーザ中心設計。このような言葉を聞いたことはあるけど、よくわからない。概念としてはなんとなく理解しているけど、実務レベルではどのように使われているのかイメージがつかない。そんな人にオススメの一冊です。

ユーザビリティとは、ユーザーがある物やサービスを利用して得られる、効果―効率―満足度のいずれの要素も阻害しないこと。(ISO 9241)
ユーザーエクスペリエンスとは、ユーザビリティを超えた経験。これは「デザイナの観点とユーザの観点(特に感性的な面)」と「時間軸(特に長期的な時間軸)」を考慮したうえで、戦略、要件、構造、骨格、表層の5層で構成されるもの。
そして、この5層を積み上げる際に有効な手法であるのが、ユーザー中心設計(UCD)/人間中心設計(HCD)である。
という導入から始まり、UCDによる調査・分析、設計、評価手法と話が展開されていきます。

調査・分析パートでは、インタビュー法、インタビューの実践、データ分析法。設計パートでは、発想法、プロトタイプ。評価のパートでは、ユーザビリティ評価法、ユーザテスト、ユーザテストの準備、ユーザテストの実施、分析と再設計。それぞれが、いくつかの手法を取り上げつつ、一連の流れとして丁寧に説明されています。

私のような、UXやUCDに興味はあるけど経験がないという人が、調査・分析、設計、評価と一連の作業を想像してみると、さまざまな疑問や迷いが浮かんでくると思います。それらに、丁寧に答えてくれているところが、この本の面白さです。

「多くの初心者インタビューアは、実はユーザの話を真剣に聞いていません。“師匠”の話を聞かずにいったい何をしているかというと、一生懸命「次の質問」を考えているのです。」 (インタビュー法“師匠と弟子”)

「 「なぜ○○しないのですか?」はインタビューの禁句です。この問いかけは、ユーザに“分析”を依頼していることになるからです。」 (インタビュー法“もつれた糸を解きほぐす”)

これはインタビューの経験が無いとついついやってしまいそうなことですね。ユーザの話をしっかりと聞くことが基本中の基本ですし、ユーザの体験を把握することがインタビューアの役目です。

「ユーザビリティを評価する時には、まず自問してください。自分たちは設計を“これから”始めるのか、“途中”なのか、それとも事実上“終了”したのか。この質問に答えれば、用いるべき評価手法は自ずと決まります。」 (ユーザビリティ評価法“総括的評価と形成的評価”)

評価をするタイミングはとても重要ですね。それを決めるのは、自分たちの設計が全工程のどの位置にいるかを明確にすることなんですね。前もって設計工程に評価を組み入れることも大切なように感じました。

「…といった疑問に対する明確な回答を期待していますが、それはユーザに“口頭”で回答してもらうのではなく、ユーザの“行動”から明らかにすべきことです。」 (ユーザテストの準備“タスクの設計”)

確かに“口頭”での回答は理解が簡単ですし、なんとなく安心に感じます。しかし、それにはユーザによる無意識の言葉の編集や、ニュアンスによる理解の違いが生まれがちです。やはり“行動”を観察することに徹することが大切なんですね。

上記はほんの一部で、この本には示唆に富んだ言葉がたくさん詰まっています。通読すると著者の一連の作業を、隣に立って体験した気持ちになれます。

4. 書誌情報

ユーザビリティエンジニアリング 第2版 書影

ユーザビリティエンジニアリング(第2版)
―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法

著者: 樽本 徹也
発行日: 2014年2月20日
出版社: オーム社
ISBN: 4274214834 / 978-4274214837
価格: 2,500円(税別)
Amazon / 楽天 / 7net / 紀伊國屋 / honto / ジュンク堂

5. 読者プレゼント

ここまでご紹介してきた『ユーザビリティエンジニアリング(第2版)』を、著者の樽本さんと出版社のオーム社様のご厚意で、ご献本いただきました。
こちらを抽選で3名の方にプレゼントいたします。

応募方法

  1. U-Site編集部のTwitterアカウント(@UsabilityJp) をフォローしてください(すでにフォローしてくださっている方はそのままで大丈夫です)。
  2. 4月20日(日)4月15日(火)中に下記のツイートをリツイートしてください。
    (4月15日11:30追記: 募集開始1日で50名を超える方からご応募いただきましたので、締切を早めさせていただきますがご了承ください)

4月16日15:45追記: 募集を締め切らせていただきました。たくさんのご応募、ありがとうございました。

公開:2014年4月14日
著者:U-Site編集部

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