黒須教授のユーザ工学講義

『人間中心設計におけるユーザー調査』の出版

題記の本が近代科学社からHCDライブラリーの一冊として出版されたので、この場をお借りして紹介させていただくことにする。

これからの世の中には、基幹産業といえるものがなかなか見えないのではないか、と思えてくる。この低成長の時代において、製造業やサービス業はどのような進み方をすればいいのだろう。

地政学(geopolitics)とは、地理的要素と政治との関係を扱い、生活体としての国家を動的に把握するもののようである。その程度の理解だったが、INTERACT 2021で“Geopolitical HCI”というワークショップが開かれると聞き、ちょっと興味をもった。

このコロナ禍で、縮退したリアルと、拡張したバーチャルとによって、現実感の喪失に陥ってしまった。リアルとバーチャルの比率が歪んでしまうと、自分が現実世界に生きているのかさえ信じられない気持ちになることがある。

精神的作業を行う際、時間経過による集中力の低下を考慮し、経験値をもとにすれば、受動的場面では60分程度を、能動的場面でも最大で120分を限度とすべきだといえるだろう。

今回取り上げるのは、ユーザリサーチャーとUIデザイナーの関係である。必要とされるコンピタンスも異なる2つの職種だが、その接点はどのようにあるべきなのかを考えてみたい。

我が家では、2021年5月の緊急事態宣言で、飲食店で酒が飲めなくなってから、宅配食を利用するようになった。要素的にUXを考えて見ると、宅配食というのは、まあトータルでそこそこ、というレベルにあると評価すべきなんだろう。

筆者が住む調布市でも高齢者へのコロナワクチン接種が開始された。その予約サイトへの到達、利用者登録、接種日の予約のUXについて気になる点があったので紹介したい。

今回は、人間中心設計に関する国内規格・2021年版JIS Z 8530について、そのポイントを見ていくことにしたい。これは、2019年版ISO 9241-210の(部分的に修正がいれられた)日本版である。

日本の政府が公式にどのような態度をとり、対応をとろうとしているかを知るためには、「政府広報オンライン」のようなポータルの存在意義は大きい。これがワンストップサービスとして十分に機能していればいいのだが、どうもそうはなっていない。